『万引き家族』のリリー・フランキー、安藤サクラ、樹木希林が語る「親になること」|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
『万引き家族』のリリー・フランキー、安藤サクラ、樹木希林が語る「親になること」

インタビュー

『万引き家族』のリリー・フランキー、安藤サクラ、樹木希林が語る「親になること」

『万引き家族』で共演したリリー・フランキー、安藤サクラ、樹木希林
『万引き家族』で共演したリリー・フランキー、安藤サクラ、樹木希林

第71回カンヌ国際映画祭で、最高賞のパルムドールを受賞した是枝裕和監督作『万引き家族』(6月8日公開)。本作で、犯罪でしかつながれなかった家族を演じたリリー・フランキー、安藤サクラ、樹木希林にインタビュー。3人はどんな想いを胸に、本作に臨んだのか?

祖母・初枝(樹木希林)の古い一軒家で身を寄せ合って暮らす家族5人。日雇い労働者の父・治(リリー・フランキー)と息子・祥太(城桧吏)は、生活のために2人でよく万引きをしている。ある日2人は、団地の廊下で凍えていた少女・ゆり(佐々木みゆ)を見つけ、家に連れて帰る。妻・信代(安藤サクラ)は呆れるも、傷や痣だらけの少女を見て彼女の境遇を察知し、そのまま彼女の面倒をみていく。

是枝監督作『そして父になる』(13)では、がさつでお調子者で子煩悩の父親役が好評を博したリリー。「今回はいままでとは違い、いろいろと考えて現場に行きました。自分の声じゃないほうがいいのかなとか、自然体ではなく、芝居するという意識を持って演じたほうがいいのかなと思ったりしたけど、結局はなにも考えず、いままでどおりでした。是枝さんからは、最初から最後まで『でくのぼうでいてください』と言われました(笑)」。

父・治(リリー・フランキー)と息子の祥太(城桧吏)は、2人でよく万引きをしている
父・治(リリー・フランキー)と息子の祥太(城桧吏)は、2人でよく万引きをしている[c]2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.

役柄のために、日焼けサロンに通ったというリリー。「ほかはなにも準備してなくて。でも何度か通っていくうちに、『全然、焼き足りない』と感覚が麻痺し出すんです。本作の試写を観た時、『俺、黒すぎないか?』と思いました(笑)」。

是枝組初参加の安藤は、本作が出産後初の映画出演となった。「私はなにかを考えて現場に行った記憶はないですが、この家族と過ごした時間によって、家族の関係性が育まれていきました。すごく楽しかったです」。

樹木が安藤に「でも、あなたはきっと、どこの場所に行っても楽しくしちゃうでしょ?」と聞くと、安藤は「特に、この家族とは気が合ったというか、待ち時間も楽しかったです」と語る。リリーは「待ち時間のほとんどが、希林さんの噂話を俺たちが聞いている感じでした」と笑う。

初枝役の樹木は、入れ歯を抜いて役に臨んだ。「また、是枝作品に同じ顔で出てくるのが嫌だったから、顔を変えたかったの。髪も長くして、かなり“気持ち悪いおばあさん”にこだわったの。この映画での私の役目はそこだと思ったから」。

祖母・初枝(樹木希林)の年金を頼りに暮らす一家
祖母・初枝(樹木希林)の年金を頼りに暮らす一家[c]2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.

樹木は、劇中でリリーと安藤が演じたラブシーンを「せつなくて潔い。神々しくて良いシーンになったと思いました」と心から称える。リリーは「平成で一番気持ち悪いラブシーンにしよう」と安藤に言って臨んだそうだが、やはり樹木は「そのはずなんだけど、神々しいのよ。(安藤の)お尻もきれいに映っていたわよ」と繰り返し褒める。

安藤は「本当ですか?お尻だけは一生誰にも見せまいと思っていたし、家族にも見られたくなかったから」と苦笑い。

リリーが「なんの予告もなく目の前に前貼りを置かれて、すぐに貼り始めた俺たちもどうかとは思うけど(笑)。普通は『事務所に確認させてください』と言うからね」とツッコむと、安藤は「まさか是枝組で、しかも現場に入ってすぐのシーンで『前貼りです』と言われるとは思っていなかったです」と述懐。

新しい家族のゆりも加わり、貧しいながらも幸せに暮らしていた6人
新しい家族のゆりも加わり、貧しいながらも幸せに暮らしていた6人[c]2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.

樹木は、すかさず「そのフレーズいいね。“まさか是枝組で前貼りとは” というのがキャッチーだね」と言うと、リリーも「スケベ根性を出せば、お客さんが増えるかもしれない。“前貼り家族”だ」とノリノリの様子だった。

『万引き家族』は、『誰も知らない』(04)から様々な家族のあり方を問いかけてきた是枝監督の集大成的な作品となった。是枝組の常連である樹木は、是枝監督の変化をこう語る。

「是枝さん、子どもがいない時はもうちょっと気楽な感じで、前貼りの映画もたくさん撮りたかったと思うんです。だけど、自分が父親になったことで、少し変わったと感じたし、それはいいことではないかと。リリーさんも子どもを持つと、糸の切れたタコみたいに、もっと違うところへピョーンと飛んでいくんじゃないかしら。そこから戻って来た時、また別の形で面白くなる。そういう意味で、家庭を持ったほうがいいかなとも思いました」。

リリーも「いままでは夜に1人で家にいてもなんとも思わなかったのに、最近は寂しいなと思うようになってきたんです。どうしたらいいんですかね」と、樹木に尋ねると、「リリーさん、つるんでた仲間たちが、結婚しちゃったのよ」と説明する。

リリーが「サクラさんはお子さんができたばかりですが、どうですか?」と安藤に振ると「産まれたあと、最初の作品だったから、子どもがいるからどうだというところまで考える余裕はなくて、ただ必死でした」と答える。

安藤は、今秋放送のNHK朝の連続テレビ小説「まんぷく」のヒロインを務める。「本作で勇気をもらい、どうにか挑戦できたから、朝ドラもチャレンジしようと思えたんです。そういう意味でも、このタイミングで、是枝組に参加できて良かったなと思いました」。



取材・文/山崎 伸子

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