『万引き家族』、最初のタイトルは『声を出して呼んで』だった!リリー・フランキーらが語る

インタビュー

『万引き家族』、最初のタイトルは『声を出して呼んで』だった!リリー・フランキーらが語る

『万引き家族』で共演したリリー・フランキー、安藤サクラ、樹木希林
『万引き家族』で共演したリリー・フランキー、安藤サクラ、樹木希林

是枝裕和監督作『万引き家族』(6月8日公開)が、第71回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞。日本人監督の同賞受賞は、1997年の今村昌平監督の『うなぎ』以来21年ぶりの快挙ということで、本作は一気に熱い視線を浴びた。本作で、いびつだけど愛おしい家族を演じたリリー・フランキー、安藤サクラ、樹木希林を直撃。

今回、是枝監督が描いたのは、犯罪を通してでしかつながることができなかった家族の絆だ。その家族5人は、祖母・初枝(樹木希林)の年金を頼りに、古い家で仲良く暮らしていた。日雇い労働者の父・治(リリー・フランキー)と息子の祥太(城桧吏)は、生活のために2人でよく万引きをしている。ある日2人が、団地の廊下で凍えていた少女(佐々木みゆ)を家に連れ帰ったことで、事態はある事件へと発展していく。安藤は、治の妻・信代役を演じた。

父・治役のリリー・フランキー
父・治役のリリー・フランキー

万引きをしたり、自分を偽ったりして、身を寄せ合い生きている治たちを見ていると、彼らの関係性をどこか肯定したくなる。子どもたちから「お父さん」や「お母さん」と呼んでほしいと願う治と信代の表情も、なんだかいたたまれない。

リリーによると「それがもともとのタイトルであり、脚本もそこが重点的に書かれていました。最初は映画のタイトルも『声を出して呼んで』だったんです」とのこと。

「本作では、家族というシステムの煩わしい問題を描いています。しかも描かれているのは、家族の表面ではなく、性やお金、教育など、奥にある面倒くさい部分でしょ。でも、俺は撮影しながら、家族って大変だなと思う一方で、家族とはやっぱり素晴らしいと強く思いました。家族って煩わしいけど、それと同じくらいいいことがあるんだなと」。

祖母・初枝役の樹木希林
祖母・初枝役の樹木希林

樹木は「実際に家族を持ってしまうと、はーっ…と思うこともあるからね。役者としては、実際の家族を経験してみて、ああ面白いなとは思うけど、なくて済むものなら1人でもいいわよ」とリリーに語る。

リリーは、撮影の帰りにも、そのことを樹木と話し合ったそうだ。「俺は『大人になったら結婚して、車の免許を取ることが夢なんです』とずっと言ってきたんです。そしたら希林さんが『もういいわよ。結婚は早くしておかないとダメなの。物事の分別がついたら結婚なんかできないから』と」。

樹木が「リリーさん、もう50歳を過ぎているんだから」とツッコむと、リリーは「いや、まだ分別もついてないし、車の免許も取ってないので」と苦笑い。

樹木は「家族というのは、どんなに離れていても面倒くさいことがありますよ。ましてや朝から晩までいるとなるとね。まあ、私は家族を殺しちゃうような気持ちはわからないけど、殺してやりたいと思うのもわかるなって感じです」と達観したように言う。

本作では、血がつながってない家族のあり方が提示される。樹木は「だから上手くいく場合もある」と言うと、安藤も「それは一理あるかな」と腑に落ちたような表情を見せる。リリーが「元来家族には、血がつながってない人同士のつきあいもあるから。嫁とかもそうですよね?」と言うと、安藤が「私のところはそうですね」とうなずく。

母・信代役の安藤サクラ
母・信代役の安藤サクラ

樹木が「あなたの資質がいい。だから上手く行くのよ。実にいい家族よね」と称えると、リリーも「安藤さん、人間がいいから。なかなかいないタイプだね」と続けて褒めちぎったので、安藤は「そんなことないです」と恐縮する。

「私は夫のお母さんと、夫の伯母さんと女3人で家にいることがすごく多くて。みんな同じ名字だけど、誰も血がつながっていない女たちですが、実はそれが家族のなかで気を遣わずにいられる3人だったりするんです」。

リリーが「血がつながっていると、欲が出たりするのかもしれない」と言うと、樹木も「それが落とし穴だわね。そう考えると、いろんな課題を投げかけてくれる映画ですね」と納得する。

【写真を見る】カンヌ国際映画祭で、安藤サクラや松岡茉優がドレスアップして登場
【写真を見る】カンヌ国際映画祭で、安藤サクラや松岡茉優がドレスアップして登場[c]2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.

「できあがりを観た時の印象も、撮影していた時の印象も本当に面白かったです」と言っていたリリー。カンヌ映画祭での上映時には、約9分間にわたるスタンディングオベーションを受け、キャストやスタッフ陣も感極まり、涙したとか。その感動をぜひ、大スクリーンで味わってほしい。

取材・文/山崎 伸子

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