『空飛ぶタイヤ』の長瀬智也、ディーン・フジオカ、高橋一生が語る“男の戦い方”
池井戸潤のベストセラー小説初の映画化作品『空飛ぶタイヤ』(公開中)で共演した長瀬智也、ディーン・フジオカ、高橋一生にインタビュー。3人とも30代後半の同世代スターということで、和気あいあいとした掛け合いを見せてくれたあと、男の闘い方について、それぞれの想いを語ってくれた。
本作で共演シーンがなかった長瀬と高橋は、ドラマ「ハンドク!!!」での共演以来、この取材日に約17年ぶりの再会を果たした。長瀬は「今回は一切絡みがなかったし、これまですれ違いもしなかったけど、やっと会えたね!」と感激する。高橋も長瀬に「本当になかなか会えなかった(笑)」と満面の笑みを浮かべたあと、ディーンとは「初めまして」と挨拶を交わす。
長瀬は「一生くんは相変わらずでうれしくなります。20代前半で出会ってから同じ世界で頑張ってきて、お互いの作品を観たり、こうして再会できたりする。年を重ねていけばいくほど、そういうことが大事になっていく。ディーンくんとも、今回が初共演とは思えないほどフィーリングが合ったし、すごくワクワク感がありました」と笑顔を見せる。
ディーンは「僕、個人的な興味があるんですが…」と切り出したあと、2人に「17年前の2人はどんな感じだったの?」と興味津々の様子。
長瀬が「恐ろしいくらい変わってない」と言うと、高橋も「そうだと思います。僕は、長瀬さんが休憩明けで寝ていた僕を、ガンガン楽屋のドアを叩いて起こしてくれたことを覚えています(笑)」となんともうれしそうに2人が目を合わせる。
長瀬は「そのころ、ディーンくんは海外を視野に入れて動いていたと思うけど、同じ母国で、同世代というだけで、お互いにつかめるものがある気がする」とすっかり意気投合している様子。
本作で長瀬が演じたのは、ある日突然起きたトレーラーの脱輪事故で、整備不良を疑われる運送会社社長・赤松徳郎役。赤松は車両の欠陥に気づき、製造元の巨大企業・ホープ自動車を糾弾していく。ディーンは、赤松の訴えに耳を傾けないホープ自動車の社員・沢田悠太役を、高橋は、グループ企業であるホープ銀行の社員・井崎一亮役を演じた。
変な状況だったと思いますが…。赤松の苦しみやもがきを思うと、苦しいと同時にせつなくも感じます」。
3人がそれぞれの持ち場で格闘していくが、彼らは演じた役のどこに共感したのか?長瀬は、赤松について「自分自身を冷静に見ることができないくらい、がむしゃらに戦っている」という点に魅力を感じたそうだ。
「格好つけてる暇なんてない!と言ったほうがわかりやすいかもしれない。赤松は計算でやっていないから、ぐっときます。僕は役者として、常に役柄の心情を想像します。もちろん、赤松が抱えるリスクは、僕などには到底想像もできないくらい大
ディーンは、演じた沢田を「すごく人間的」だと捉えた。「沢田はあくまでも企業で生きる人で、出世欲があるけれど、遺族に対してなにも思わない人でもない。彼は企業内でのルールに反発する気持ちもあり、社内で不正が行われていることを知ると、正義感みたいなものを感じたりもします。ずっと車線変更を続けるというか、天使と悪魔の天秤が揺れ続けるなかで、最終的にああいう決断を下します。きっと彼は人間の直感と、社会のルールや理性とがちょうどクロスした焦点にいたと思いますが、その姿は実に生々しいと思いました」。
高橋は、本作の物語について「登場人物たちは皆、自分が思う正しさを追求していくからこそ、それらが衝突し合い、争いや対立が生まれてしまう」と、それぞれの立場に立たされた男たちをおもんばかる。
「僕が演じた井崎は、企業や上司のやり方に歯向かうことになりかねないことでも、自分が気持ち悪いと感じることや、はっきりさせたいと思ったことは追求していきます。僕は井崎を見ていて、すばらしいモチベーションを持った人だと思いました」。
池井戸潤が描いた骨太な男たちの戦いを、それぞれのポジションで演じきった3人。三者三様の人間力が役柄と相まって、力強い社会派ドラマに仕上がったので、乞うご期待!
取材・文/山崎 伸子