池田エライザ、『ルームロンダリング』のこじらせ系ヒロインに共感
ニコラのモデルを経て、女優としても独自のカラーを発揮してきた池田エライザに単独インタビュー。主演映画『ルームロンダリング』(7月7日公開)では、ある時から幽霊が見えるようになるヒロイン・八雲御子役に扮した。心に深い孤独を抱える“陰”のヒロイン像に心から共鳴できたという池田。今回、彼女が持つ“陽”のパブリックイメージとは異なる心の内について話を聞いた。
マネーロンダリングならぬ“ルームロンダリング”とは、事故物件に一定期間だけ住み、忌まわしい履歴を消すこと。5歳で父親と死別し、母親も失踪してしまった八雲御子は、叔父の雷土悟郎(オダギリジョー)から言われるがままに、ルームロンダリングのバイトをしてきた。ある時から幽霊が見えるようになった御子は、部屋に居座る幽霊たちに振り回されていく。
本作は「TSUTAYA CREATORS'PROGRAM FILM 2015」準グランプリ作に輝いたオリジナル企画の映画化作品で、共同脚本を手掛けた片桐健滋監督の長編映画監督デビュー作となった。
「片桐監督は、御子ちゃんと健太郎さん演じる亜樹人は自分の分身だと言われていました。私も御子ちゃんには近いものを感じていたので、自分のなかでふっと生まれた感情については監督と随時話し合い、2人でキャラクターを掘り下げていった感じです」。
あまり感情を外に出さず、内にこもりがちな御子。感情表現における不器用な部分は、池田自身とも共通するところが大きかったそう。「御子ちゃんは怒り方ですらよくわかっていないし、それをあまり表にも出したことがなかったんです。私ももともと大きい声を出し慣れていないし、2~3日、人としゃべっていないと声の出し方すら忘れそうになります。御子ちゃんと同じく実はテンポが遅いタイプで、芝居をする時は特に遅くなってしまいがちだし」。
10代のころは輪をかけて内向的だったという池田は「17~18歳のころはコミュニケーションの恐怖というか、新しいところに踏みだす時、先が見えないことが怖かったです。そのあと、いろいろなものに振り回されたり影響されたりして、いままで自分が感じたことがない感情が沸々と湧いていきました」と当時の心境を吐露。
演じた御子も、突然、幽霊と対面し、戸惑いつつも、彼らの悩みや葛藤を聞いていくうちに、悩める幽霊たちを救いたいという感情が芽生え始める。
「御子ちゃんも最初はきっと怖かったと思います。例えるならスライムを知らない人から、急にスライムを渡されるようなものですよね(笑)。『なにこれ!?』みたいな感じで。私はそもそもゲテモノとかは怖くて食べられないタイプだし、自分の資質はかなり御子ちゃんと近かった気がします。しかも、彼女はその資質をさらにこじらせていた。私も17歳当時はそうで、数年経ってからやっと『自分はこじれている』という自覚が芽生えたんです」。
今年22歳となった池田。「あのころは視野が狭かったのかなと。そのことを自覚してからは、どんなことも経験したほうがいいとようやく思えるようになり、恥ずかしいことも増えていきました。いまは“絶賛恥ずかしい時期”です(笑)。でも、先が見えないことが楽しみというか、目の前の壁を打ち砕くことが楽しくなってきました。10代のころ、もう少しこうしておけば良かったと思うことはたくさんあるので、いまはそれを取り返そうと思って必死に頑張っています」。
ヒロインを務めた『映画 みんな!エスパーだよ!』(15)で園子温監督に鍛えられ、古澤健監督の青春ラブストーリー『一礼して、キス』(17)で映画初主演を務めた。舞台挨拶では自分を飾ることなく、素直な本音を口にする池田は、自分自身について「ゴーイングマイウェイですよね」と笑う。
「『頑張っています』というアピールは相変わらずしないです。お芝居はまだまだだから、現場では全力でやるしかないけど、舞台挨拶でそこは見せなくてもいいかなと思っちゃう。それよりも、外から見えないところで、自分がどれくらい頑張れたかのほうが大事なので」。
取材・文/山崎 伸子