池田エライザが語る『ルームロンダリング』の“ずぶずぶひたひた”なシーン
人気モデルを経て、女優としても成長著しい池田エライザが、青春ラブストーリー『一礼して、キス』(17)に続いて主演を務めた映画が、新鋭・片桐健滋監督の長編映画監督デビュー作『ルームロンダリング』(7月7日公開)だ。本作では自分自身の内面と向き合い、繊細な演技を見せている。
本作は「TSUTAYA CREATORS'PROGRAM FILM 2015」準グランプリ作に輝いたオリジナル企画の映画化作品。聞き慣れない“ルームロンダリング”とは、ワケあり物件に住み、忌まわしい履歴を消すことを示す。5歳で父親と死別し、母親も失踪してしまった八雲御子(池田エライザ)は、叔父の雷土悟郎(オダギリジョー)から言われ、ルームロンダリングのバイトをしている。ところがある日を境に幽霊が見え始め、彼らの相談を聞いていくことに。
オファーを受けたのは、彼女がたまたま実家に帰省していた時だった。「久しぶりに家族に会って、そのありがたみを感じながら台本を読んだので、私としては御子ちゃんとおかあさん(つみきみほ)とがやりとりをするシーンが一番心に響きました。もちろん本作には、コメディ要素や愛らしい部分もいっぱいあるのですが、なかなか自分自身や家族に向き合えていなかった私は、わかりやすく殻に閉じこもっている御子ちゃんにすごく共感できました」。
池田と、母親役のつみきみほとは初共演だったが「横にいるだけで泣きたくなるような、自分がとろっとろに溶けていくような温かい方」と語り、全幅の信頼を寄せたそうだ。
「笑顔も素敵で、顔を見つめて話す時も、毎回深くうなずきながら話してくださる方でした。母性あふれる方だったので、私は赤子のような気持ちで接し、心から頼りきりました。見ているだけであんなに温かい気持ちになれる人ってなかなかいないと思います。だから、終盤では御子ちゃんがやっと殻から出られて“産まれたての御子ちゃん”になれた感じがします。2人のシーンは“ずぶずぶひたひた”な感じで、すごくエモーショナルなシーンになりました」。
叔父である雷土悟郎役のオダギリジョーや、御子とぎこちない交流をしていく隣人・虹川亜樹人役の健太郎と池田が織りなす化学反応も本作の魅力である。
「健太郎くんとは現場でほとんど話さなかったのですが、それは御子ちゃんと亜樹人くんと同じような距離感で良かったと思います。お互いに尊重し合ったからそうしたのか、自由でいられる現場の空気感がそうさせたのかはわからなかったけど、役柄と非常に近い距離感で、少しずつ気持ちがほどけていくのを感じながら演じていきました。
オダギリについては「本作で初めてお会いしたんですが、現場でも芝居中も常に“悟郎おじさん”でいてくださったので、非常に助かりました。お二方とも『ルームロンダリング』という1つの惑星のなかで、その空気感に合わせてくださったのでありがたかったです」と感謝する。
読書家である池田は、1つ1つの言葉の選び方が丁寧で、ゆっくりと自分の思いを吐き出していく。女優としてはいまだ未知数の伸びしろを感じるが、本人も「すべてにおいてまだ“なにかの過程”にいます」と感じている。
「最近はなにごとも楽しむことが上手くなってきたことは、自分の人生においてもすばらしいことだと思っています。オファーしてくださる役柄は、似た系統はあっても毎回違って、それは監督やキャスティングしてくださる方々が、私のことをおもしろく想像してくださってのことだから、誰かの想像力をかきたてられること自体がうれしいです。だからもっともっと頑張っていきたいです」。
取材・文/山崎 伸子