ニック・パーク監督が語る、CG時代のストップモーション・アニメのあり方
パーク監督の代表作でもある「ウォレスとグルミット」シリーズは、『ウォレスとグルミット ベーカリー街の悪夢』(08)とその後10年にBBCで放送されたテレビシリーズ以降制作されていない。長年ウォレスの声を担当してきた名優ピーター・サリスが健康上の理由で2010年に俳優を引退し、昨年6月2日に96歳でこの世を去った。「ピーターと一緒に仕事ができたことは、本当に光栄に思っている」と語るパーク監督の声は、様々な想いが込みあげてきたようで少し震えていた。
「いまでもはっきりと覚えているのは『ペンギンに気をつけろ』のプレスコ(先にセリフを収録し、その演技に基づいてアニメーションを作成すること)の時、クライマックスの汽車を追いかけるシーンの脚本とストーリーボードを見せても彼はよく理解できなかったようで、文句を言いながら収録に臨んだんだ。でも僕は彼に言った。『僕を信用してください』って。そしてプレミア上映の時、拍手喝采の会場でピーターは、僕を見つけると満面の笑みで親指を立ててくれたんだ」。
ウォレスというキャラクターは、自身の父親を投影させた思い入れの深い存在だと公言しているパーク監督。それゆえに、命を吹き込んでくれたピーターへの思いは格別なようだ。「彼はとてもひょうきんで話し上手な人だった。独特の声質やクオリティをウォレスにもたらしてくれて本当に感謝している」と敬意と深い感謝の念を表し、「ピーターの後継者を見つけるのは簡単なことではない。でも、できることなら『ウォレスとグルミット』は今後も続けていきたいと思っているよ」と続けた。今後も世界中のアニメファンに新たな驚きをもたらしてくれることだろう。
取材・文/久保田 和馬
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