100回目の夏の甲子園、50年前となにが変わった?伝説の野球映画に見る“日本の青春”
日本に100回目の夏がやってきた――。全国高等学校野球選手権大会、いわゆる「夏の甲子園」は、今年が記念すべき第100回大会だ。世界を見回しても、100年以上の歴史を有するスポーツイベントなど数えるほどしかない。その歴史的価値を知れば、球児たちの戦いも、応援に汗と涙を流す周囲の物語も、より一層味わい深くなるはずだ。
もちろん、100回の大会史をすべて振り返る必要はない。例えば50年前、1968年の第50回大会の様子を知るだけでも、変わらないもの、変わったことが見えてきておもしろい。
“甲子園を目指す日々”の愛おしさ、儚さ、涙ぐましさ
『第50回全国高校野球選手権大会 青春』(68)は、『犬神家の一族』(76)『ビルマの竪琴』(85)などで知られる巨匠・市川崑が手がけた、球児と甲子園の物語を収めたドキュメンタリー映画だ。市川崑とスポーツ、と言えば、国民的映画として大ヒットを記録した『東京オリンピック』(65)が有名だが、本作はもうひとつの知られざるスポーツドキュメンタリー。昨年、DVD化されるまで、ファンの間で長らく“伝説”と呼ばれてきた、歴史的秘蔵映画ともいえる。
本作の特筆すべき点は、夏の甲子園第50回大会の記録映画でありながら、前年冬から日本全国を駆け回り、市井の球児たちの練習風景からカメラに収めていること。
甲子園という聖地にたどり着けるのは、全国でもほんの一握りの球児たち。ともすれば、その選ばれた世界にだけスポットライトを当てがちだが、甲子園を目指す日々にこそ、球児たちの本当の姿があることを改めて気づかせてくれる。
そして、その“甲子園を目指す日々”の愛おしさ、儚さ、涙ぐましさは、半世紀を経てもきっと変わらないもの。だからこそ、高校野球はいまも昔もこれだけ注目を集め、見る者を捉えて離さないのだろう。
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半世紀で高校野球はなにが変わり、なにが変わらないのか?
『第50回全国高校野球選手権大会 青春』
DVD 発売中 4,320円 発売元:日活
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