100回目の夏の甲子園、50年前となにが変わった?伝説の野球映画に見る“日本の青春”

コラム

100回目の夏の甲子園、50年前となにが変わった?伝説の野球映画に見る“日本の青春”

高度成長期から現在へ。高校野球は50年でなにが変わった?

その一方で、いまの野球と違う点にも気づかされる。たとえば、50年前はまだ木製バット。ヘルメットも着用していない学校がある。事故防止のための耳付きヘルメット義務化は、この大会から4年後の72年から。金属バットの解禁は74年から。いまなら「小柄」と表現されるかもしれない178cmの球児を「堂々たる体」と伝える実況アナウンサーの言葉からも、野球がスポーツ的に近代化されたのはこの50年のことなのだ、という発見ができる。

また、応援団も蛮カラ姿ばかりでチアガールは数えるほど。いまではおなじみのブラスバンド応援もこの頃はない。どこか牧歌的で汗くさく、でも、しみじみと野球を楽しむアルプススタンドの風景がある。

『第50回全国高校野球選手権大会 青春』撮影風景
『第50回全国高校野球選手権大会 青春』撮影風景[c]朝日新聞社

開会式のあるシーンで、実況アナウンサーは「ここに、日本の青春があります」とつぶやく。市川崑がタイトルに『青春』と付けたのも合点がいく。この映像は、野球に青春をかけた球児たちの物語でありつつ、高度経済成長のど真ん中にあった“日本の青春記”でもあるからだ。

100回目の夏も変わらぬ「青春の象徴」

日本の青春=高度経済成長はこの映画から5年後の1973年まで。以降、バブル期、失われた20年を経て、いまの日本は一体、何期に当たるのか。

翻って、いまでも熱狂的な人気を呼ぶ高校野球は、この50年ずっと青春時代だった、と言えるのかもしれない。ただ、問題点も多い。いまだにしごきを課す指導者、部員数と野球部の減少、酷暑のなかでプレーする開催時期の変更を訴える声は年々大きくなってきた。それでも引き続き、青春の象徴であり続けることは出来るのか? 

100回目の夏。あえて50年前の球児たちの姿を見ることで、そんなことを考えてみてもいいのかもしれない。

『第50回全国高校野球選手権大会 青春』は、日活よりDVD発売中
『第50回全国高校野球選手権大会 青春』は、日活よりDVD発売中[c]朝日新聞社

文/オグマナオト

『第50回全国高校野球選手権大会 青春』
DVD 発売中 4,320円 発売元:日活