本国ロシアで上映禁止!?世界をにぎわす“黒すぎる問題作”がついに日本上陸!

コラム

本国ロシアで上映禁止!?世界をにぎわす“黒すぎる問題作”がついに日本上陸!

時は1953年。“大粛清”という名の恐怖政治でロシア(旧ソ連)の絶対的独裁者として君臨したヨシフ・スターリンが急死した…。その内幕で側近たちが繰り広げる後継者争いの顛末を、シリアスとユーモアの絶妙なバランスで映画化し、トロントをはじめとする各国の映画祭で絶賛され、ヨーロッパや米国などでもスマッシュヒットとなった話題作『スターリンの葬送狂葬曲』が8月3日(金)にいよいよ公開。歴史に隠された“ゲスで醜い”イス取り合戦と、嘘のような(本当の)エピソードの数々が明らかにされる!

スターリンは一晩中“小便の海”に倒れていた…!?

【写真を見る】まさかの“失禁姿”で放置されたスターリン…
【写真を見る】まさかの“失禁姿”で放置されたスターリン…[c]2017 MITICO • MAIN JOURNEY • GAUMONT • FRANCE3 CINEMA•AFPI•PANACHE•PRODUCTIONS•LACIECINEMATOGRAPHIQUE• DEATH OF STALIN THE FILM LTD

極度に猜疑心の強い人物として知られるスターリン。政治家や一般市民に関係なく自身の政敵とみなし、約20年の間に数百万にも及ぶ人々を逮捕、その半数を処刑したと言われている。劇中でも粛清者の名前が並べられたリストを愉しそうに眺めるなど、その狂気ぶりが伺える。

しかし、結果的に部下からも恐怖の対象として見られることとなり、発作で倒れても、護衛は入室することができず、失禁したまま(小便の海に)放置されてしまう。さらに、側近たちが医者を呼ぼうにも、有能な医者は投獄もしくは処刑してしまったため、ヤブ医者しか集められずに結局死亡してしまう、という何とも皮肉めいた結末を迎えているのだ…。そんな、まさかの光景を収めた本編映像も入手したので、あわせて確認してみてほしい。

スターリン死後、その後釜を狙って後継者争いを繰り広げるのが、道化役で中央委員会第一書記のニキータ・フルシチョフと、秘密警察NKVDの最高責任者として多くの粛清を行ったラヴレンチー・ベリヤを中心とする側近たち。彼らはスターリンの国葬を仰々しく執り行う一方で、ライバルを出し抜くために錯綜。人気者のスターリンの娘に取り入ったり、各大臣に根回しをして味方にしたり、国民の支持を得るために粛清対象者を次々と解放し始めていく。

彼らが辛酸を舐め合い、冷や汗をかき、忠誠を誓ったはずのスターリン批判も平気でしまくる姿は、もはや滑稽の一言に尽きる…。

“不条理なユーモア”に挑んだ監督と、名優たち

厳かな国葬の裏で、醜いゲスバトルが勃発!
厳かな国葬の裏で、醜いゲスバトルが勃発![c]2017 MITICO • MAIN JOURNEY • GAUMONT • FRANCE3 CINEMA•AFPI•PANACHE•PRODUCTIONS•LACIECINEMATOGRAPHIQUE• DEATH OF STALIN THE FILM LTD
名優スティーヴ・ブシェミと、ピアニストのマリアを演じたオルガ・キュリレンコ
名優スティーヴ・ブシェミと、ピアニストのマリアを演じたオルガ・キュリレンコ[c]2017 MITICO • MAIN JOURNEY • GAUMONT • FRANCE3 CINEMA•AFPI•PANACHE•PRODUCTIONS•LACIECINEMATOGRAPHIQUE• DEATH OF STALIN THE FILM LTD

側近たちが慌てふためく様子がおかしくもあり、その残酷さに背筋がゾッとさせられる本作。脚本も務めたアーマンド・イアヌッチ監督は「当時はいつ強制収容所に送られ、銃殺されるかわからない恐ろしい時代だった。しかし、緊張と恐怖が支配する世界では、幾分ヒステリックな滑稽さが生まれる。おかしさと不気味さが感じられる作品にしたかった」と作品について説明し、独裁政権下での不条理なユーモアを表現することに試行錯誤したことが伺える。

そんな不条理な笑いを体現し、俳優生命を危機に追いやるほどの熱演を見せたキャスト陣は名優ばかり。フルシチョフを『レザボア・ドッグス』(91)で人気を博した実力派スティーヴ・ブシェミ、主に舞台で活躍するシェイクスピア俳優のサイモン・ラッセル・ビールがベリヤを怪演している。さらに、威圧的な赤軍(ソビエト軍)の最高司令官ゲオルギー・ジューコフに扮した、『ハリーポッター』シリーズのルシウス・マルフォイ役で有名なジェイソン・アイザックスのキレっぷりにも注目したい。

豪華キャストも話題の『スターリンの葬送狂騒曲』は8月3日(金)公開
豪華キャストも話題の『スターリンの葬送狂騒曲』は8月3日(金)公開[c]2017 MITICO • MAIN JOURNEY • GAUMONT • FRANCE3 CINEMA•AFPI•PANACHE•PRODUCTIONS•LACIECINEMATOGRAPHIQUE• DEATH OF STALIN THE FILM LTD

旧ソ連の暗黒時代を描いていることもあり、ロシアでは急遽上映が禁止になったが、それも劇中の出来事が“ほぼ実話”だからこそ。トランプ大統領の就任やイギリスのEU脱退など、ここ数年で世界は大きな変革を迎えており、国が直面する脅威という点では不思議と60年以上も昔の出来事との共通点を感じずにはいられない。ゲスなエピソードの数々に苦笑いを浮かべながら、現代の国や政治の在り方についても考えさせられてしまう作品なのだ。

文/トライワークス

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