『この世界の片隅に』監督も絶賛!仏の鬼才のアニメは、まるで動く水墨画
セルタッチや3DCGなど、様々な手法で人々を魅了するアニメーション。アカデミー賞長編アニメ賞候補になった『レッドタートル ある島の物語』(16)『ゴッホ~最期の手紙~』(17)など世界の秀作が毎年注目を集める中、8月18日(土)公開の『大人のためのグリム童話 手をなくした少女』もその流れに連なりそうな一作。『この世界の片隅に』(16)の片渕須直監督も「重厚で凄まじい一本の映画だ」などコメントを寄せ、独特な映像に驚かされること必至なのだ。
紡がれるのは、両腕を奪われた少女の数奇な運命
ドイツの民話集「グリム童話」に収録されている「手なしむすめ」が原作の本作は、悪魔にだまされた父親によって両腕を切り落とされた少女がたどる波乱の運命を描く物語。写真や下記の予告編を見てもらえると、誰しもが思い浮かべるアニメーションとは、ひと味もふた味も異なる映像となっていることがわかるだろう。
本作を手掛けたフランスのセバスチャン・ローデンバック監督は、これまでにも数々の短編を手掛け、その都度、異なる手法を選んできた。今回のまるで水墨画のような映像は、クリプトグラフィー(暗号)とキノ(映画)の造語である“クリプトキノグラフィー”という監督独自の手法で制作され、シンプルでありながらも、筆のようなタッチが生み出す力強さや繊細さが感じられる。
手法で納得?監督は故・高畑勲をリスペクト
ローデンバック監督は、今年4月に亡くなった高畑勲監督からも多大な影響を受けているといい、一本一本の線に生命が宿っているかのような独特な映像は高畑監督の『かぐや姫の物語』(13)を彷彿させる。残酷な描写や性的な事柄を含む内容も多く、童話でありながら子どもにはちょっと刺激が強いイメージのあるグリム童話。この映画も“大人のための”とタイトルにあるように、ぜひ大人のみなさんにこそ観てほしい作品なのだ。
文/トライワークス