森見登美彦が北香那の声優センスに太鼓判!「本当にアオヤマ君みたい」

インタビュー

森見登美彦が北香那の声優センスに太鼓判!「本当にアオヤマ君みたい」

『フミコの告白』(09)や『陽なたのアオシグレ』(13)など国内外で高い評価を獲得してきたアニメーション界の新鋭・石田祐康監督が、人気作家・森見登美彦の同名小説を映画化した『ペンギン・ハイウェイ』が8月17日(金)から公開。本作で主人公の少年・アオヤマ君の声を演じ声優デビューを飾った北香那と、原作者の森見を直撃した。

『ペンギン・ハイウェイ』主演の北香那と原作者・森見登美彦のツーショットが実現!
『ペンギン・ハイウェイ』主演の北香那と原作者・森見登美彦のツーショットが実現!撮影/黒羽政士

まず森見は「デビュー前から、自分が子どものころに奈良の郊外の住宅地をウロウロしながら妄想していたことを小説にしたいと思っていました」と、原作を執筆した経緯を振り返る。03年に「太陽の塔」でデビューし、その後数多くの人気作を世に送りだし10年に発表した本作で、森見は日本SF大賞を受賞する。「それまでずっと書いていた“京都の大学生小説”とはだいぶ違うものだったので、読者からもずいぶん驚かれましたけどね」と笑顔で語る。

これまで湯浅政明監督によってアニメ化された「四畳半神話大系」や『夜は短し歩けよ乙女』(17)、P.A.WORKSが手掛けた「有頂天家族」など、メディアミックスが続く森見作品。文字で綴った物語が映像として生まれ変わることには「まだ慣れないですよね」と打ち明ける。「何回か観ていくうちに落ち着いて観られるようになるので、『ペンギン・ハイウェイ』も3回目か4回目くらいでようやく。しかも、勢いで書いた、原作の弱点と呼べる部分まで石田監督は忠実に映画化してくれたんです。原作を尊重してくれているのはうれしいのですが、観ていて本当にヒヤヒヤしました(笑)」。

『夜は短し歩けよ乙女』に続くアニメ映画化に「まだ慣れないですね」と語る森見登美彦
『夜は短し歩けよ乙女』に続くアニメ映画化に「まだ慣れないですね」と語る森見登美彦撮影/黒羽政士

一方、本作で初めて森見作品との出会った北は「読んでいて、森見さんはきっとアオヤマ君みたいな方かなと思っていました」と明かす。それについて森見は「いやいや…」と笑顔で首を横に振りながら「こんなに賢い子じゃなかったです。どちらかといえば引っ込み思案な、ウチダ君のような子どもでした。でも町を探検して『川を遡れば世界の果てがあるんじゃないか』って考えているところは似ているかもしれません」と、自身の子ども時代を振り返った。

テレビ東京系列で放送されたドラマ「バイプレイヤーズ」シリーズのジャスミン役で注目を集めた北は、かねてから声優に憧れていたとのこと。「きっかけは宮崎駿監督の『千と千尋の神隠し』だったんです。台詞を全部覚えるためにずっと観ていて、お母さんから『頼むからほかのを観せてくれ』って言われるくらいで(笑)」。そんな彼女は、声優初挑戦とは思えない見事な演技を披露し、小学4年生の少年の繊細な心情を演じきっている。「最初はカチカチしたしゃべり方で、自分のことを頭がいいと思っている少年なんです。でもどんどん子どもっぽい部分が見えてくる。そういったところに気を付けながら演技しました」。

【写真を見る】「バイプレイヤーズ」で注目を集めた美少女が、念願の声優デビュー!
【写真を見る】「バイプレイヤーズ」で注目を集めた美少女が、念願の声優デビュー!撮影/黒羽政士

そして「普段やっているお芝居だと、自分で表情を作って声と顔が一緒に出せる。でも声だけの演技では、すでに作られている映像に声をあてていくので、それに合わせて声を出さなきゃいけない」と、実際に声優に挑戦してみて実感した、実写での演技との違いを語る。「トーンがちょっとでも違うと聞こえ方が変わるのだとわかって、難しかったけど本当に楽しくて、夢中になりました!」と楽しげな表情を見せる。

そんな北の“アオヤマ君”について森見は「小説を書いていた時には声をイメージしていなかったのですが、映画を観ると本当にアオヤマ君みたいに思えて。文章で表した彼の賢さと子どもらしさがすごく絶妙なバランスを保っていたと思います」と太鼓判を押す。それには北もはにかみながら「うれしいです」と小さく微笑んだ。

北香那がふたたび“森見ワールド”のキャラクターを演じてくれることに期待!
北香那がふたたび“森見ワールド”のキャラクターを演じてくれることに期待!撮影/黒羽政士

今後も声優に挑戦してみたいと意気込む北。もしかするとふたたび森見作品に出演することもあるだろう。最後に森見に、自作に登場するなかで北に演じて欲しいキャラクターは?と訊ねてみると「今回のアオヤマ君役で、演技の幅がすごい方だと実感したので、いろんな役ができそうですね」とじっくりと考えながら「『有頂天家族』とかに出てくるたぬきの女の子や、変わったタイプのキャラクターでも上手く演じてくれそうです」とにこやかに新進女優の今後に期待を寄せた。

取材・文/久保田 和馬

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