『アントマン』のポール・ラッドが語る、愛娘との秘密と「ハローキティ」採用の理由
バツイチ、無職、前科持ちというトホホな男、スコット・ラングが、愛娘のために身長1.5cmの最強ヒーローとなる。そんなアントマン役で人気を博すポール・ラッドが、シリーズ最新作『アントマン&ワスプ』(8月31日公開)で来日した。プライベートでは2児の父でもあるポールは、本作に娘への愛情をたっぷりと盛り込んでいるそうだ。
MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)で初めて女性ヒーロー名がタイトルに入った作品としても話題を呼んでいる本作。父親が開発したスーツをまとい、アントマンと共に戦う女性ヒーロー、ワスプとなるのは、脅威の身体能力を誇るホープ・ヴァン・ダイン(エヴァンジェリン・リリー)。このパーフェクトなヒロインとアントマンとの凸凹コンビが、本シリーズの新たな見どころとなる。
アントマン役の続投はもちろん、前作から脚本家としても関わっているポールは「続編が決まったのは、1作目の撮影中だったけど、すでにアントマンとワスプの映画になることは決定していた」と語る。「アントマン」シリーズしかり「アベンジャーズ」シリーズしかり、近年、マーベルの続編は前作越えのクオリティを保っているが、その秘訣について聞くとポールは「ケヴィン・ファイギだよ」と、マーベル・スタジオの社長にして、数多くのマーベル作品を手掛けてきた敏腕プロデューサーの名前を挙げる。
さらにポールは、続編としての利点についても解説してくれた。「前作で『アントマン』の世界観やキャラクターの説明がきちんとされていたから、続編はより自由に、より大胆で大きな物語にすることができた。1作目では、僕自身がアントマンとして観客に受け入れてもらえるかどうかもわからなかったし、脚本段階で、スコットのユーモアやシリアスさのさじ加減も探りながらやっていた。でも、2作目ではそれらが全部決まっていて、僕のことも観客はすでに受け入れてくれていた。また、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(16)に出たことで、アントマンがMCUのユーモア担当となる位置づけもできあがっていたので、本作ではさらにそこを強めることができたとも思う」。
本作でアントマンは、1.5cmだけではなく、60cm、5.5m、24mといろんなスケールとなって戦うので、その分、アクションシーンに遊び心が加わった。「サイズが変わるから、目線をどこに置くかなどは注意して演じたよ。難しかったのは学校で撮影した60cmのシーンだ。目線の動きはもちろん、ワスプとのサイズの違いを同じ画角で見せないといけなかったから。また、24mの巨大サイズになった時は、ゆっくりと体を動かしたりしたかな」。
アントマンやワスプだけでなく、劇中では車が小さくなったり、研究所もカートで運べるサイズに小さくできたりと、すごく便利だ。あるシーンでは、「ハローキティ」のペッツディスペンサーが重要な小道具として使われるが、本作を試写で観た時、筆者のバッグに色違いの同ディスペンサーが入っていて、思わずのけぞってしまった。そのことをポールに伝え、持参したペッツディスペンサーを見せると「本当に!?すごいね」と満面の笑顔を見せ「それはミラクルだ。『アントマン』の取材をする運命にあったわけだね」とノリノリのリアクションをしてくれた。
ちなみに、このペッツディスペンサーの登場は脚本段階からあった設定だとか。「1作目では『きかんしゃトーマス』が出てきて好評だったから、今回も似たような感じのものを入れたいと思った。日常に転がっていそうなもので、全く害を与えないものが巨大化し、アクションシーンに出てくるのがおもしろいと思い、脚本の初期段階でペッツディスペンサーを登場させることが決まっていた。また、娘のキャシーが買いそうなものということで『ハローキティ』になったんだ」。
キャシーのことをとても愛しているスコットだが、ポール自身は一男一女の父親である。ポールは「僕は現実の世界でスーパーヒーローではないけど、スコットの父親としての葛藤は、僕自身が経験していることとすごく似ていたりする。僕も息子や娘を毎日学校に送り迎えしたいという気持ちがあるし、常に父親として家族に寄り添っていたいと思うけど、役者というのは、世界中を旅しないといけないから、必ずしもそうはできない。そこは悩ましい部分でもある」と父親としての思いを吐露。
「だから僕は、1作目から、僕の娘にしかわからない秘密のメッセージを劇中に入れているんだ。いま娘は8歳になったけど、1作目の時はまだ4、5歳で、僕が自分以外の少女のパパになっていると知ったら、複雑な気持ちになるんじゃないかと心配になった。それで娘に『本当の娘は君だから』と伝えたくて入れたんだ。内容は秘密だけど、娘にだけわかるメッセージになっているんだよ」。
スコット同様に、娘を溺愛しているというポール。「娘はプレミアに参加してくれて、すでに本作を観てとても気に入ってくれた。アントマンのイラストをよく描いてくれるし、サイドテーブルには小さなフィギュアが置いてあって、通学バッグのキーチェーンにもアントマンがついている。また、アントマンのおかげでアリも好きになっちゃった。僕としてはすごくうれしいよ」。
取材・文/山崎 伸子