黒沢清が巨匠を語る!「ぴあフィルムフェスティバル」が今年も開幕

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黒沢清が巨匠を語る!「ぴあフィルムフェスティバル」が今年も開幕

これまで多くの映画監督を輩出し、今年で第40回を迎えた自主映画の祭典「ぴあフィルムフェスティバル(PFF)」が8日、東京・京橋の国立映画アーカイブで開幕。会期前から大きな話題を集めていたロバート・アルドリッチ監督特集のアフタートークに黒沢清監督が登壇し、初日から会場は大盛況となった。

今年8月にスマートフォン用アプリとして復活した「ぴあ」で、スティーヴン・スピルバーグやサム・ペキンパーら著名な映画監督から受けた影響を語るコラム「黒沢清、映画監督を語る」を連載し、多くの映画ファンを釘付けにしている黒沢監督。この日彼が語ったアルドリッチ監督は、50年代から80年代にかけて西部劇やフィルム・ノワールの傑作を世に送り出した巨匠。

満席の会場から大きな拍手で迎えられて登壇した黒沢監督は「高校から大学に進学する70年代半ばのこと、『ロンゲスト・ヤード』と『北国の帝王』を観て、瞬く間に魅了されました」と、アルドリッチ作品との出会いを明かす。そして「アルドリッチは誰もが古色蒼然に違いないと思っていた本気の男同士の闘いを、目の覚めるような形で描いていて僕はびっくりした。馬鹿げたことを目の覚めるような痛快さで描いていて、画期的で本当に面白かった。当時の僕は、娯楽映画はここにあると思いました」とその魅力を熱弁。

この日、トーク前に上映された作品はアルドリッチ監督の代表作のひとつで、カルト的人気を誇る名作ノワール『キッスで殺せ』(55)。「正直言って、この映画を娯楽映画の巨匠アルドリッチの代表作にしていいものか迷います」と、同作の一度観ただけでは咀嚼しきれない奥の深さに言及した黒沢監督は、会場に向けて「とんでもない映画を観てしまった、というのが率直な感想ではないでしょうか」と語りかける。

さらに「フィルム・ノワールで扱われる謎は、もっとわかりやすい。その中で『キッスで殺せ』は特別と言ってもいいでしょう。謎そのものが、悪そのものが最後に目の前に正体を現すという映画。もはやフィルム・ノワールでなくなっていると言ってもいいかもしれない。こんな途方もない映画は、アルドリッチのフィルモグラフィにも、世界の映画の歴史においてもほとんど見当たらない」と述べ「僕自身も主人公が謎に突き進んでいく映画を何本か撮りましたが、恐ろしいので主人公を探偵にしたことはありません」と同作から受けた影響と、その特異さを物語った。

黒沢監督が脱帽する『キッスで殺せ』は9月19日(水)に2度目の上映が行われる。また、会期中にはアルドリッチ監督の傑作群の上映に加え、未来の日本映画界を担うであろう才能が結集したコンペティション部門「PFFアワード2018」や、伝説のカメラマン・たむらまさきの追悼企画など、映画ファン要注目のプログラムが目白押し。是非とも足を運んでみてはいかがだろうか。「第40回ぴあフィルムフェスティバル」は9月22日(土)まで開催中。

文/久保田 和馬

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