東京国際映画祭最大の問題作!?監督&主演女優が神秘的な主人公の秘密を激白!
現在開催中の第31回東京国際映画祭で28日、今年春に代表作『メイド・イン・ホンコン』(98)の4Kレストア版が公開され大きな話題を集めた香港の名匠フルーツ・チャン監督の最新作で、コンペティション部門に出品されている『三人の夫』が上映。その上映後に「Face-to-Face with フルーツ・チャン」と題したスペシャルトークイベントが行われ、チャン監督と主演のクロエ・マーヤン、脚本のラム・キートーが登壇した。
本作は、香港の港に停泊する船の上で暮らす常人離れした性欲を持つ女性・ムイと、彼女に売春をさせて荒稼ぎする2人の年老いた男、そして彼女に恋をした青年の4人が繰り広げる寓話的な物語。香港のルーツや半人半魚伝説を織り交ぜながら、センセーショナルなシーンの数々をユニークかつファンタジックに描き出していく。
日曜日の夜遅くにも関わらず、チャン監督らしいビビッドで奇妙な作風に衝撃を受けた観客は大勢が会場に残り、監督の口から直接語られる本作のエピソードの数々に興味津々。それにはチャン監督も時折顔をほころばせながら意気揚々とトークを進めていた。
第27回の「ワールド・フォーカス部門」に出品された『ミッドナイト・アフター』(14)以後もコンスタントに作品を発表しているチャン監督。日本に紹介されるのは同作以来4年ぶりのこと。『ドリアンドリアン』(00)と『ハリウッド★ホンコン』(01)につづく“娼婦三部作”の完結編となる本作について、チャン監督は「この映画の物語はだいぶ前からすでにあった」と明かし、前作から実に17年の期間が空いた真相を語り始めた。
「前2作はとてもオーソドックスな手法で撮影した。しかしそれではチャレンジにならない。それに当時は、3作目に登場する女性をどう描くのかはっきりした考えを持っていなかった。この17年の間で役柄について考える時間がたっぷり与えられ、今の時代に合った変化や成長があったほうが良い、中国の伝統的な価値観を突破しなければならないと思ったんです」と、本作にとって最も重要なムイというキャラクター構築の発端を語る。
そして「ただ、この役は本当に難しい。ムイを演じきれるすばらしい女優さんがいないと実現できないと思っていた。だから私たちはムイの登場を待たなければならなかった。これはある種、運命だったと思っている。彼女の素晴らしい演技のおかげですべてが輝いた。この17年は無駄ではなかったんだ」と、隣に座っていたクロエを褒めちぎった。
そんなクロエは、本作が初の映画主演。「脚本をもらったのは撮影の初日でした」という、珍しいエピソードで会場を驚かせた彼女は、撮影のために体重を1ヶ月で13.5キロ増量しただけでなく、劇中では激しい濡れ場も辞さない体当たり演技を披露。「脚本を読んで真っ先に気に入ったのは冒頭の言葉でした。『世の中の美しいものはだいたいリアルではない』。その言葉は、私を非常にソフトにしました。監督はきっとこの映画を通して、ある種の美を作り出そうと思っていると感じました」。