“性のゆらぎ”を描く『21世紀の女の子』に込められた14人の監督の想いとは?
『溺れるナイフ』(16)の山戸結希監督が企画・プロデュースを務め、80年代後半~90年代生まれの新進監督14名による、それぞれ約8分の短編作からなるオムニバスムービー『21世紀の女の子』。第31回東京国際映画祭の日本映画スプラッシュ部門の特別上映作品として11月1日にTOHOシネマズ六本木で上映され、山戸監督ほか14名の監督たちが上映後のQ&Aに登壇した。
劇中での上映順に、『回転てん子とどりーむ母ちゃん』の山中瑤子監督から一人ずつ作品について説明。“自分自身のセクシャリティあるいはジェンダーが揺らいだ瞬間”が共通のテーマで、『粘膜』の加藤綾佳監督は「山戸監督とお話しして、いくつか出てきたキーワードから“肯定”を選びました。女性から性行為をしたいと言うことがはばかられる半面、言ってもいいんじゃないかと思いました」と作品に込められた想いを語った。
“性のゆらぎ”というテーマにピンときていなかったというのは『恋愛乾燥剤』の枝優花監督。「仕事で出会った10代の子から、人を好きになれませんという相談をされて、ちょっとわかるなと思ったんです。小・中学生の時とかは隣の子を好きになったりしたのに、大人になるとあの人の職業がどうとか、細かいことにこだわって、相手の真ん中が見えなくなる瞬間が多くなっているんですよね」と意外なところからヒントを得たのだという。
『Mirror』の竹内里紗監督は、女性監督ばかりを集めた企画に当初は違和感を覚えていたというが、彼女を納得させたのは山戸監督の言葉だった。「みんな女性だったら、女らしいとか、女性らしい感性って言われることはないし、それぞれに対してちゃんと話ができるような映画になるよっておっしゃってくださって。自分が女性監督と言われるのに違和感があったので、そのことを映画にできればといいなと。外側から求められるイメージと、本当の自分に悩む人を描こうと思いました」。
「無駄な時間が多いと考えることがあって…」と物語の発想のきっかけを語ったのは『愛はどこにも消えない』の松本花奈監督。「“性のゆらぎ”とかジェンダーという概念が生まれる前に、誰かを好きになったりする気持ちがまずあって。例えば、誰かと結婚したとしても、前に付き合っていたほかの人との時間もあって、それは絶対に無駄な時間だったと思っちゃダメなんだと。過去の積み重ねでいまの自分は形成されているのだし、死ぬときにいままでの自分は好きだったなと思えたらいいなという考えで作りました」。
ここまで真面目に作品のテーマについて語る監督が多いなか、場内から笑いを誘ったのが『セフレとセックスレス』のふくだももこ監督。「最近、彼氏と別れまして、このパーカーに書いてある名前が元カレなんです」と驚きの告白。さらに作品のタイトルについては、「彼氏が“セフレとセックスレス”というワードを携帯のメモ帳に書いてて、そのためにいる目的の2人がそれをしなくなったという矛盾の関係がおもしろいなと思ったんです」と発想のきっかけを話した。
「初めて知ることが多くて楽しかったです」と13人の監督たちが作品に込めた想いを聞き、最後にマイクを握ったのは山戸結希監督。「女性監督ならではということをここにいる監督の全員が言われたことがあると思います。でも、別にそれに言葉で反論しようとは思いません。それは言葉を映画が追い越す瞬間があると思っているからです。映画的な批評よりも批評的な映画のほうがずっと速度が速いと思います。これは批評へのチャレンジでもあります」と強いメッセージを残し、Q&Aは終了。19年2月8日(金)からの劇場公開時には、今回とは違う順番で上映されることも発表された。
取材・文/トライワークス