宮野真守を魅了した、櫻井孝宏の“美しい音色と説得力” 瀬下寛之監督は2人のやり取りに驚き
全三部作で制作されたアニメーション映画『GODZILLA』シリーズ(通称:アニゴジ)の最終章『GODZILLA 星を喰う者』(公開中)では、ゴジラ討伐に執念を燃やす主人公・ハルオと、異星人で宗教種族のメトフィエスの関係性の変化が大きな見どころ。メトフィエスの目論見とは?そしてハルオの目にする未来とは…?声優の宮野真守(ハルオ)と櫻井孝宏(メトフィエス)という人気・実力を兼ね備えたトップランナーが、ドラマチックな物語を熱演している。瀬下寛之監督、宮野、櫻井に集まってもらうと、お互いに抱いている並々ならぬ信頼感が明らかとなった。
ーー『GODZILLA 星を喰う者』では、ハルオとメトフィエスの対立が描かれます。この2人の関係性をどのように思いましたか?
宮野「メトフィエスは悪に見えるかもしれないけれど、彼には彼なりのポリシーや、自分の星の考え方もある。ハルオだってメトフィエスに救われた部分もあるし、彼の言っていることを理解することもできる。そういった種族間の違いというのは、本シリーズで描かれる最も大きなテーマであり、最もおもしろいところだと思います。実は誰も悪いやつはいないのでは、と思っています」
ーー宮野さんにとって、メトフィエス役が櫻井さんだったからできたこと。櫻井さんにとって、ハルオ役が宮野さんだったからこそ、引きだされたと感じることなどがあれば教えてください。
宮野「そう感じることばかりです。ハルオとメトフィエスということを抜きにしても、そもそも、宮野から孝宏への絶大な信頼感がある(笑)。現場で僕が打ち出したものに対して、櫻井さんは必ずなにかを感じてくれるだろうという信頼感があるからこそ、ハルオを演じきることができたと思います」
櫻井「僕もそうです。この作品は複雑で難解な部分があるので、挑むような気持ちでお芝居をしていました。一方で、ハルオは自らを削らなければいけない役だと感じていました。陳腐な言い方になってしまいますが、大変な役、難しい役だなと思っていたんです。宮野くんの芝居には、人間の息吹や体温が感じられる。生々しいんです。メトフィエスはどこかハルオに対して盲目的なところがあるのですが、宮野くんとの掛け合いは、スッと引き込まれていくような、魅入られてしまうような感覚を覚えました」
宮野「うれしいですね。僕が櫻井さんの演じるメトフィエスの声を聞いていて思ったのは、すごく好きな音色だったということ。櫻井さんから出てくるのは、ずっと好きな綺麗な音色でした。だからこそ『ハルオはメトフィエスを信頼することができたんだ』と感じることができました。宗教種族であるメトフィエスの持つ説得力って、すごいですよね。ハルオという役を離れて、宮野としても『櫻井さんはこんなにも難しい役を、どうしてこんなに説得力ある言葉で紡げるんだろう』と思っていました」
ーー瀬下監督は、お2人のやり取りを見ていていかがでしたか?
瀬下「目を閉じると、僕らが作っている絵よりも、はるかにすばらしい絵のなかにハルオとメトフィエスがいるような感覚さえしてくるんです。お2人は吹き付ける風や、地面の冷たさまでを感じて演じていらっしゃるんだと思います。宮野さんと櫻井さんのやり取りを見ていると、われわれ演出陣が見る前に、どこかで2人で練習してきたんじゃないかという感じがある。喫茶店とかで練習してきてるんじゃないですか?」
宮野&櫻井「それはしてないです(笑)!」
取材・文/成田 おり枝