ミュージカル演出の巨匠、ロブ・マーシャル監督が『メリー・ポピンズ リターンズ』演出秘話を語るイベント開催

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ミュージカル演出の巨匠、ロブ・マーシャル監督が『メリー・ポピンズ リターンズ』演出秘話を語るイベント開催

ロサンゼルスのハリウッドで行われたAFI映画祭(American Film Institute Film Festival)にて、『メリー・ポピンズ リターンズ』(19年2月1日公開) の公開を控えるロブ・マーシャル監督のトークショーが行われた。

『メリー・ポピンズ リターンズ』は、『シカゴ』(02)、『NINE』(09)、『イントゥ・ザ・ウッズ』(14)とミュージカル演出で手腕を発揮してきたマーシャル監督の真骨頂とも言える作品。マーシャル監督自身も、映画を観て初めてミュージカルを意識した作品が64年の『メリー・ポピンズ』だったと告白し、「僕がミュージカルを愛するきっかけになった作品で、ファンタジーの楽しさやダンス、そしてすばらしいパフォーマンスが一つになった完璧なミュージカルだと思う。今回、“リターンズ”を作るにあたって、オリジナルの『メリー・ポピンズ』への敬愛やオマージュを込めたかったので、前作が血肉に流れているようなキャストと作り上げたいというのが第1条件だった」と語った。

そして、かつて『シカゴ』を演出した時のレニー・ゼルヴィガーのエピソードを紹介した。「レニーはミュージカル初挑戦で、毎日『私を早くクビにして!』と泣き、まったく自信を持てずにいた。でも、僕はレニーがロキシーという役の脆く弱いところを掴んでいると確信していたので、『君が歌ったり踊ったりしているんじゃない。ロキシーが踊っていると思って演じてほしい』とアドバイスした。僕が役者に求めるのはそういうことなんだ」。

本作でも、バンクス家の長男マイケルを演じるベン・ウィショーが亡き妻を思い歌うシーンに苦労しているときに、「ベン、いつも舞台や映画で演じているようなモノローグにリズムが乗っていると思ってやってみて」と演出し、誰もが心を動かされる素晴らしいミュージカルシーンに仕上がったと告白する。

主役のメリー・ポピンズ役については、「ポピンズを演じられる女優を探すなんて重責だと思うだろう?でも、最も簡単だった。エミリー・ブラント以外考えられなかったから!ポピンズ役は最高の女優で、厳格さと奥ゆかしさ、そしてそれらの奥底にある子どもっぽさがあって、歌って踊れて…さらにエミリーは英国人だからね!ジュリー・アンドリュースが演じたポピンズを再度演じるのは不可能に近いチャレンジだとみんな思うだろうけど、エミリーは見事に彼女らしいポピンズ像を作り上げたんだ」とベタ誉め。

また、ポピンズの友人で街灯点灯夫のジャックを演じたリン=マニュエル・ミランダは、ミュージカル「ハミルトン」でピューリッツアー賞、グラミー賞、エミー賞を受賞した舞台出身の実力派。『モアナと伝説の海』(16)では作曲と歌を担当し、その多彩ぶりを発揮していた彼だが、映画では初の大役となる。「アンドリュースや(前作でバート役を演じた)ディック・バン・ダイクは舞台出身だから、生粋の舞台役者をキャスティングしたかった。ミュージカル映画は、舞台と映画の融合だから。リンはジャック役に必要な素直さと明るさを持っていて、エミリーと共にこの壮大な冒険に参加してくれるだろうと思ったんだ」と、キャスティング秘話を語った。

トークショー終盤では、初公開となる映画からのミュージカルナンバー「Trip a Little Light Fantastic」が上映され、会場からは大きな拍手が沸き起こった。およそ54年ぶりに蘇る名ミュージカル映画の続編に、いまから心を躍らせざるをえない。

取材・文/平井伊都子

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