550万人動員の新鋭監督が贈る『義兄弟』に注目
『サマリア』(04)のキム・ギドク、『オールド・ボーイ』(03)のパク・チャヌク、『母なる証明』(09)のポン・ジュノら、世界的な鬼才監督を生み出した韓国映画界に、また1人、才能あふれる新星が誕生した。その人物は、弱冠35歳の若手監督、チャン・フンだ。
08年、自身が師事したキム・ギドク監督の原案・製作、ソ・ジソブ&カン・ジファン主演の『映画は映画だ』で監督デビューを飾った彼は、なんと1作目にして驚くべき成績を叩き出している。同作の製作費は、韓国商業映画における平均額の5分の1にも満たない、たったの6億5000万ウォン(現レートで約4700万円)。そんな低予算映画でありながら韓国で140万人を超える観客を動員し、10倍以上の収益を上げるという興行的成功を収めたうえに、映画賞もにぎわせて一躍注目を浴びた。
そして、10月30日(土)からシネマート新宿・シネマート心斎橋ほかで全国公開となる待望の2作目『義兄弟 SECRET REUNION』は、解雇された韓国国家情報員と、国に見捨てられた北朝鮮工作員、ふたりの男の葛藤と奇妙な交流を見つめたヒューマンサスペンスだ。南北間のとてつもない緊張感、スピード感あふれるアクション、そしてソン・ガンホ、カン・ドンウォンが魂をぶつけて演じた主人公の悲哀と人情が交じり合い、スリルとユーモアが連続。何より、すべては愛に行き着く、という人間の本質と希望を描き、『シュリ』(99)や『JSA』(00)といった、かつての重々しい“南北朝鮮対立もの”とは一線を画す。より洗練されたチャン監督の演出センスはたちまち話題となり、本作は韓国で550万人を動員。本年度上半期の観客動員・興行成績No.1を記録する大ヒットとなったのだ。
2作連続の快挙を遂げ、韓国映画界に新風を吹き込んだチャン・フン監督。数字や記録はさておき、まずは彼の映画の面白さを是非とも体感してほしい。【トライワークス】