役者職人・古田新太が語る『十三人の刺客』の魅惑的世界

インタビュー

役者職人・古田新太が語る『十三人の刺客』の魅惑的世界

スクリーンに彼が現れただけで、もう面白い。古田新太は、そんな独特の雰囲気とコミカルな表情が人気の個性派俳優だ。最新作『十三人の刺客』(9月25日公開)でも、古田は豪快な浪人に扮し、観客の期待に応えてくれている。同作は、1963年に公開された工藤栄一監督の名作を、鬼才・三池崇史監督がリメイクした時代劇エンターテインメント。最凶の暴君を討つため、彼に仕える約300人の敵を相手に、13人の男たちが死闘を繰り広げる。

江戸時代末期、将軍・家慶の弟で明石藩主・松平斉韶(稲垣吾郎)は、近く老中に就任すると決まっていた。だが、その暴君ぶりは幕府や国の存亡に関わると危惧した老中・土井は、斉韶暗殺を決断。御目付役・島田新左衛門(役所広司)にその命を下す。やがて新左衛門のもとに12人の強者がそろい、暗殺計画実行の日が迫る。

ド派手なアクションや痛烈なグロい演出、稲垣吾朗扮する暴君の清々しいほどの悪態ぷりなど、三池節が全編にわたって炸裂している本作。以前から三池作品のファンだという古田は、嬉しそうに本作の魅力を語ってくれた。

「映画は、いつもの三池さんの、“そんなバカな!”みたいなアクション映画。笑っちゃうぐらいの血が流れたり、エンターテインメントとしてのやり過ぎ感は、三池作品の素敵なところだと思います。13人で300人の悪い大群をやっつけるという設定は、いわば王道。当然、お客さんとしては少人数の方を応援しますよね。戦っている彼らを見ていると、敵役を演じた市村正親さんでさえも『“頑張れ!』って手に汗握ったとおっしゃっていました。そのカタルシスは、「ワンピース」とか「NARUTO」を見ている小学生もわかるんじゃないかなと思います」。

古田が本作で演じた佐原平蔵は、13人のうちのひとりの浪人で、槍使いの名手。「平蔵は、他のメンバーとは違う」と話す古田。「戦いに参加できる喜びは感じているけど、平蔵は正義のために戦うのではなくて、“金がもらえるなら参加します”みたいなノリ。なおかつ死に場所を探している男。そこが好きだったんです」。

撮影は主に山形の奥地で行われたが、過酷な撮影の中でも楽しくチームワークを育んだ様子だ。「屋外での撮影ばかりだったので、日没には必ず終わるわけです。そうなると(夜が長いから)『今日はあっち? それともこっち?』みたいに飲みにばかり行ってました(笑)。僕が一番多く一緒にいたのは山田(孝之)かな。山田って普段はテンション低いけど、芝居になると一気に高くなる。こいつカッコイイな!と思いましたね。ほかにも、伊勢谷や高岡とか、旬の若手たちと一度に会えるなんて滅多にないので、彼らと毎晩のように飯食って、いろんな話ができたのは良かったですね。役所さんや松方さん、伊原さんも優しくて厳しい先輩。“一発でガツンと決めていくよ”みたいな存在感がある。良いチームだったと思います」。

ある時はホームレス、ある時は二枚目、またある時は神様と、ジャンルを問わずに、様々な役を演じている古田。出演作品へのこだわりについて尋ねると、「競演者と監督ですね」とあっさり答えが返ってきた。「『古田さんは、いろんな役をやってバイタリティーがあってすごいですね』ってよく言われるけど、役で決めてないんだ、俺。いろんな役をいただけるのは俳優としてありがたいですが、好きな監督の作品ならば、スケジュールさえ合えば何でもやる。それが僕のスタンスです」。そんな彼のスタイルと古田を必要とする監督が、常に新しい古田新太を生み出しているのだろう。

映画の中の刺客たちは、役所広司扮する頭・新左衛門を尊敬し、命を懸けて戦う。そんな武士の姿は、現代で働く人々へのメッセージ性も感じる。「たとえ理不尽だとわかっていても戦う。それが武士の生き方。例えば、サッカーや野球でも、強いチームでお金をたくさんもらってプレイすることは素晴らしいと思うけど、弱いチームを優勝に導くっていうロマンもあるはず。職人のような生き方で、俺はかっこいいと思うんですよ! 俺はすぐに上司を裏切るタイプなので、武士にはむいてないかもしれませんが(笑)」。

映画の魅力と撮影中のエピソードを大いに語ってくれた古田新太。取材は、彼の役者職人としてのプライドと誇りを感じさせるインタビューとなった。【取材・文/鈴木菜保美】

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