樹木希林、高畑勲、スタン・リー…2018年にこの世を去った映画界の大物たち
まもなく新たな年を迎えるが、2018年も監督や俳優など多くの映画関係の大物たちがこの世を去っていった。そんな彼らを偲んで、その功績を振り返っていきたい。
公開作も控える日本の名脇役俳優たち
多くの巨星たちが生涯に幕を下ろした2018年。中でも最も話題を集めたのが、9月に75歳で亡くなった日本を代表する大女優、樹木希林だろう。名脇役として強烈な個性を放ち、半世紀以上にわたり女優として活躍。2008年には紫綬褒章を受賞するなど、輝かしいキャリアを誇った。
『モリのいる場所』、パルムドール受賞の『万引き家族』、『日日是好日』と2018年も多くの出演作が公開。中でも彼女の死後に公開された『日日是好日』(公開中)は、小規模上映にも関わらず、現在までに動員100万人するヒットを記録。その影響力の大きさを感じさせた。2019年には、長いキャリアの中で初めて企画を務めた『エリカ38』も公開される予定。主演は樹木の直々の指名により、長年親交があった浅田美代子が務め、樹木は浅田演じる女性の母親として出演している。
大杉漣も今年の2月に66歳の若さでこの世を去った名バイプレイヤー。300の顔を持つ男と言われ、映画やTVドラマ、舞台など、精力的に活動。特に北野武監督の作品に欠かせない人物で『HANA-BI』(98)では、国内の映画賞を総なめにした。今年は、長いキャリアの間で意外にも初というプロデュース作品で、最後の主演作でもある『教誨師』(公開中)などが劇場で上映された。役の大小を問わず多くの作品に出演していたがゆえに、2019年にもナレーションを務めた『世界一と言われた映画館』(1月5日公開)や、友情出演している『BACK STREET GIRLS ゴクドルズ』(2月8日公開)など、出演作が控えている。
また、俳優としては二枚目の役から「必殺仕事人」シリーズの悪役まで幅広く活躍し、マキノ雅彦名義で監督としても『寝ずの番』(06)などを手がけた津川雅彦も、4月に愛する妻、朝丘雪路の死を見届けると、その後を追うように8月に78歳で亡くなり、「渡る世間は鬼ばかり」シリーズの姑役などで知られる赤木春恵も94歳で亡くなるなど、日本を代表するいぶし銀の俳優たちが多くこの世を去っていった。
世界中で愛された映画の作り手たち
4月に肺がんのため82年の生涯を閉じたのが、日本アニメ界の巨匠、高畑勲監督だ。1985年に宮崎駿監督と共にスタジオジブリを立ち上げると『火垂るの墓』(88)『おもひでぽろぽろ』(91)など、数々の名作を世に送り出してきた。遺作となった『かぐや姫の物語』(13)は、企画開始から8年の歳月と50億円を超える製作費が投じられた日本のアニメとしては破格の作品に。そんな高畑の思いが詰まった本作は国内外で高く評価され、受賞はならなかったが、アカデミー賞長編アニメーション部門にもノミネートされた。また『平家物語』の映画化を構想していたそうで、残念ながら叶わぬ夢となってしまった。
日本国外では『地球に落ちて来た男』(76)などで知られ、スティーブン・ソダーバーグやクリストファー・ノーランなどに影響を与えたイギリスのニコラス・ローグ監督が90歳で逝去。『ラストエンペラー』(87)でアカデミー監督賞・作品賞などを受賞したイタリアの巨匠ベルナルド・ベルトリッチも11月に77歳で亡くなった。
現在の映画界に大きく貢献した人物で、マーベルの父として知られるスタン・リーも今年の11月に95歳で亡くなった。先日行われた「東京コミコン 2018」では、会場の中央に彼の死を悼む追悼モニュメントが設置され、その隣のメッセージボードには、多くのファンが彼への想いを書き込んでおり、改めてその影響力の大きさを感じさせた。
MARVEL作品にカメオ出演することでも有名だった彼は、『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019年4月26日公開)には、登場することが発表されている。『キャプテン・マーベル』(2019年3月15日公開)『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019年公開)など、多くの作品が公開予定だが、いつまで彼の姿を拝むことができるのかと考えると少し寂しい気持ちになってしまう。
48歳という若さで亡くなった作曲家のヨハン・ヨハンソンなど、紹介しきれないほど多くの著名人たちがこの世を去った2018年。仕方のないことだが、彼らの作品をもっと観ていたかったと思ってしまうというのが正直な気持ちだ。
文/トライワークス