大泉洋、5分間に及ぶ熱のこもったスピーチ!渾身の主演映画がいよいよ公開
第35回大宅壮一ノンフィクション賞と第25回講談社ノンフィクション賞をダブル受賞した渡辺一史の著書を映画化した『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』が12月28日(金)から公開されるのに先がけて27日、東京・丸の内ピカデリー1にて公開前夜上映会が開催。大泉洋と高畑充希、三浦春馬、前田晢監督が舞台挨拶に登壇した。
本作は難病・筋ジストロフィーを患う鹿野靖明の、わがまま放題で自由すぎる生き様を描いた実話。介助なしでは生きられない体でありながらも病院を飛び出しボランティアたちと自立した生活を送っていた鹿野と、彼に振り回される医大生ボランティアの田中。ある時、鹿野はたまたま家を訪れた田中の恋人・美咲にひと目惚れしてしまうのだが…。
冒頭の挨拶から「並々ならぬ気合いで撮影して、並々ならぬ気合いで宣伝活動をして参りました」と、本作に全力投球したことを明かす大泉は「これまでは正直なところ、映画を撮ったくらいでなにも変わらないと思っていたんですが、この映画は違った。自分の考え方が変わった珍しい映画でした」と、存命であれば26日に59歳を迎えていた鹿野さんへ思いを馳せる。
さらに劇中の台詞を引用しながら「自分ではできないけど助けてもらえばできるという時には、人にお願いしてもいいんだなと思うようになった。娘にも『助けてほしいことがあったら助けてもらいな。その代わり誰かを助けてあげられる人になってほしい』と言うようになりました」と熱く語った。
一方で、ボランティアの田中を演じた三浦は、本作の内容にちなんだ「いまだから言いたいわがままは?」という質問を振られると、回答に詰まって黙り込んでしまう。するとすかさず大泉が「台本読まなかったのかよ!?」と鋭いツッコミを入れ、代わりに「(宣伝活動での)生放送でも言ったんですけど、春馬くんとスナックでカラオケをしまして…」と助け舟を出す。
「春馬くんが歌う『走れ!マキバオー』が本当にすばらしかったので、それ以外も聴きたい。それに充希ちゃんとは行けなかったので、今度は3人でカラオケに行って周りを気にせず歌いたいなと思います」と、劇中さながらに2人に“わがまま”をリクエスト。3人でなにを歌うか相談しはじめると大泉は「今年はやっぱり『グレイテスト・ショーマン』かな」とつぶやき、突然「From Now On」を熱唱。あまりの美声に会場は拍手喝采に包まれた。
最後にキャストを代表してマイクをとった大泉は「真面目な話になると思いますが」と表情をガラリと変え、鹿野さんが亡くなる直前の様子について話し始める。片時もボランティアの人と離れなかった鹿野さんが、その日に限ってはプロのヘルパーの人だけを残してボランティアの人々を家に帰したこと。そしてヘルパーの人に一言「ありがとう」と告げて眠りながら亡くなっていったこと。「改めてこの人を愛さずにはいられない。この人を演じることができて本当に良かったなと思っています」と大泉は込み上げてくる感情を精いっぱい抑えるようにして語っていく。
そして「生きている間にお話することができなかったので、鹿野さんと話してみたいという想いでいっぱいです。この映画を観て、人に迷惑をかけないのが美徳とされるこの国の中で、それだけじゃないという考えが伝わればいいと思うし、みなさんが考えるきっかけや、なによりも同じ障がいを持つ人たちのためになればいいなと願っております」。実に5分以上に渡る、大泉が本作に込めた強い想いを感じることができるスピーチに、会場からは温かな拍手が贈られた。
取材・文/久保田 和馬