実写とアニメの音楽制作の違いは?梶浦由記が明かす『Fate』サウンド・クリエイトの秘密 - 2ページ目|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
実写とアニメの音楽制作の違いは?梶浦由記が明かす『Fate』サウンド・クリエイトの秘密

インタビュー

実写とアニメの音楽制作の違いは?梶浦由記が明かす『Fate』サウンド・クリエイトの秘密

『第二章』主題歌は、桜の生々しさ、攻撃的な部分も表現した渾身の曲

『第二章』も間もなく公開。主題歌では桜の心理がより深く詞に、音楽に表現される
『第二章』も間もなく公開。主題歌では桜の心理がより深く詞に、音楽に表現される[c]TYPE-MOON・ufotable・FSNPC

――『第二章』の主題歌「I beg you」は、どういったコンセプトの楽曲なのでしょうか。

「『花の唄』は、映画をご覧になった方に『この曲いいね』と思い入れていただけたら、そこを通してより桜を愛していただけたら…を目指していたので、伝わりやすさも意識した“皆さまにも、士郎にも愛してもらえそうな桜の歌”として書いたのですが、『I beg you』はもう一枚ヴェールをとっぱらったと言いますか、正直『花の唄』よりこちらの曲が好き、という方は少ないのではと思いますし、それでいいと思っています。“好き”とかそんなところじゃないというか。自分では『第二章』の桜を描くエンディングテーマとして、すごく納得のいく曲にはなりましたので、皆さんにもそう思っていただければいいなと願うばかりですね。『第二章』は桜の闇、いわゆる病んでいる部分により迫るような曲にしようと書き初めてみたのですが、よくある“病み曲”のズブズブ沈んでいくような切り口では上手く行かず、というのも桜って病んでいる自分が好きじゃないし、すごくドライで計算高いところもあるんですよね。自分を突き放して冷笑しているような一面もある。そういう人に、自己陶酔しているような病み曲は全然合わなかったんですよ。彼女の冷めた目線や打算的なところ、妙な生々しさをちゃんと出したいな、と思って書いていたら、サウンド的にもウェットな方には行かずすごく自分でも意外な線に行っちゃって、それが一番しっくりきたんです。渾身の作ではあるので、皆さんがどう受け止めてくださるのかが楽しみです。歌詞にも少し攻撃的なところがあるので、歌ってくださるAimerさんサイドの皆様からNGが出たらどうしようと思っていたんですけど、とても楽しみながら歌ってくださったので安心しました」

『第二章』は19年1月12日(土)よりロードショー。梶浦の手掛けた楽曲も必聴!
『第二章』は19年1月12日(土)よりロードショー。梶浦の手掛けた楽曲も必聴![c]TYPE-MOON・ufotable・FSNPC

――興味深い創作話です。ちなみにアニメのお仕事と実写のお仕事では、作曲プロセスに違いはあるのでしょうか?



「これはとても感覚的なものなんですが、実写の音楽って、空間を裏切ってもいいというのがあるんです。たとえば、すごく広い野原のシーンで、とてもドライなピアノを流しても、実写だとすごくカッコイイんですよね。音が空間の広さを裏切っても、観ている人が視覚から入る情報で、無意識に『このピアノの音は主人公の心の中の音だ』と判断してくれたりするといった、意図的な演出をすることができるんです。でも、作品にもよりますが、感覚的にアニメーションだと、広い空間の中で狭い音を流すと、ギュッと空間が圧縮されてしまう感じがするんですね。だから、実写では空間の広さを裏切るけど、アニメでは絶対に裏切らないようにしています。アニメでは設定に則した音を流すようにして、世界観を作るのに音もちゃんと荷担していようと常に思っています。だから、作品の中で描かれる世界の広さとか、色などは気にしています。まずは、脚本と背景画などをいただいて、世界観の広さとか、色合いとかそういったところを考えながら音楽を作っていますね。自分の気持ちとして、そういうものに音楽が沿うように意識して作った方が、効果があるな、と思っています。完成した作品を観た時に、画面の暗さとかを気にして作った曲の方が、主人公たちのセリフなどがしっくりくることがありますね」

――年が明けて、『第二章』を鑑賞される方々へメッセージをお願いします。

「『第一章』をご覧になった方にとっては、もう『第二章』は相当強烈なものになるんじゃないかと楽しみにされていると思いますが、その予想を裏切らない強烈な作品になっていますので、ご期待ください」

取材・文/中村実香

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