鈴木拡樹「刀剣乱舞」との出会いがもたらした変化。“2.5次元”トップランナーは努力の塊
「三日月宗近は“月”」三日月との出会いで得たものとは?
鈴木にとって三日月宗近は長く演じるキャラクターとなったが、演じる上ではキャラクターの個性を殺陣でも表現することになる。「戦っている時には、“鋼(はがね)っぽさ”を表現できたらいいなと思っています。いつもにこやかな三日月宗近ですが、鋭さや冷たさを感じてもらえる瞬間になればと。“舞うように”というのも、一つのテーマ。袖が揺れて美しく見えるのは、エンタテインメントとしても、見ていて楽しいと思います」と、たっぷりこだわりが詰め込まれている。
さらに「三日月宗近から、たくさんの刺激を受けた」と告白。「どこか裏がありそうで、探りたくなる。なにかあるんじゃないかなとロマンを抱かせるようなキャラクターで、“月”に似ているなと思うんです。月を見ると“きれいだな”と思うと同時に、“裏側はどうなっているんだろう”と感じたりしますよね。そういった興味を持たせるところが同じで、まさに三日月という名前通りのキャラクターだと思います」と分析する。
「三日月宗近を通して、“知りたい”と思わせることは、魅力につながるものなんだなと思った。すべてを説明するのではなく、想像させる余地がおもしろかったり、演じる上でも醍醐味になったりするものだと感じたんです」と役者としても、大きな気づきを得た。そういった意味でも「転機となった作品」だそうで、「16年の舞台から座長としてやらせていただき、“シリーズものを盛り上げていくにはどうしたらいいのか”と深く考えることができました。一緒にやってきたメンバーたちの支えも感じながら、続けてこられた作品。孤軍奮闘では、絶対にここまで来られなかった。みんなへの感謝する気持ちをたくさん実感した作品です」と熱く語る。
“不器用さ”が武器!憧れの先輩も告白
数々の舞台をはじめ、WOWOWのオリジナル番組「2.5次元男子推しTV」ではMCを担当、1月にスタートしたテレビアニメ「どろろ」では主人公・百鬼丸の声優にチャレンジするなど、近年の躍進ぶりには目を見張るばかり。「18年は挑戦の年でした。やったことのないことに数多く挑戦したので、テンパることも追い込まれることも多かったですね」とニッコリ。「得意ではない分野にも挑んでいった」といい、攻めの姿勢に出たことで「改めて、演劇をやり始めたころを振り返ることができました」と原点回帰も。
「僕がいまでもこのお仕事を続けていられる最大の理由は、“不器用だから”ということなんです。不器用だからこそ頑張ってこれたし、乗り越えたいという気持ちも生まれた。だからこそ、努力し続ける。僕は“できなかった時”を覚えておくことは、すごく大事だと思っていて。失敗の数で言ったら、同じ世代の役者のなかでもダントツだと思います(笑)。多く失敗させてもらったからこそ、それが強みにもなっていると思います」とブレイク俳優の素顔は、努力の塊だ。
今後の野望を聞いてみると「いろいろなジャンルの作品に出させていただきたいです。そこで受ける刺激は、のちにつながっていくもの」と吐露。「いま33歳になって、“40代はどうなるんだろう?”と目を向けている時期です。40代の先輩を見て“いいな”と憧れている自分が、この先に後輩たちに憧れられるような先輩になることができるのか。そのころには、2.5次元ももっと確立されて、“日本の文化だ”と誇れるものになっているでしょうね」と未来を見つめるが、どんな先輩に憧れているのだろうか?
すると、本作で織田信長役を演じた山本耕史の名前をあげた鈴木。「本当によくしていただいています。本作ではないんですが、お芝居で僕が悩んでいた時に、山本さんがお食事に連れて行ってくださって。『角度を変えて考えてみたら?』など、自分だけでは解決できなかったポイントを教えてくださいました。こんなに親身になってくれる先輩がいるんだと思うと、とてもうれしくて。出会いに感謝です」。努力家で謙虚な姿に触れ、鈴木拡樹のこれからがますます楽しみになった。
取材・文/成田 おり枝