『白夜行』堀北真希や高良健吾「辛いものに真正面から向き合った」
累計200万部を売り上げた東野圭吾のミステリー小説の映画化『白夜行』(2011年1月29日公開)が第23回東京国際映画祭で10月25日に上映された。舞台挨拶で、堀北真希、高良健吾、船越英一郎、深川栄洋監督が登壇し、本作へのあふれる思いを情熱的に語った。
ある殺人事件の加害者の娘・雪穂と、被害者の息子・亮司の周囲で起こる不可解な事件を通して、人間の心の闇をえぐり出す野心作『白夜行』。原作小説は東野圭吾の小説の最高峰といわれ、既に2005年に舞台化、2006年に山田孝之と綾瀬はるかを迎えてテレビドラマ化された。映画では初の悪女役にトライした堀北真希や、近年躍進ぶりが目覚しい高良健吾の共演が話題となっている。
堀北は「台本を読み、どうやって雪穂に近づいていったらいいか、すごく悩みました。悪女ですが、悪いことを自分でするシーンがあまりないので、一見好感を持てるような役。挑戦だと思って頑張りました」と、手応えを感じた様子だった。
高良も「常に満たされていない役柄できつかったです。人を騙す役だから、核心をつかれた時も疑われてはいけないし。監督はとてもドSで、『人間として悩もう。もっと人間の幅を見せよう』と言ってくれて、僕が思っていたものよりも、もっと上のものを求めてくれました」と熱く語った。
サスペンスドラマの帝王である船越は、事件を20年間追い続ける笹垣刑事役。「キャリアの半分以上は、犯人を追いかける役をやってきました。サスペンスに人生を捧げ、わかりやすくサスペンスを演じてきた。平たく言えば、説明過剰の俳優です。でも、今回は愚直に生きる刑事役で、これ以上(芝居を)排除できないよって思うくらいの演技をしましたが、監督から『まだ、船越英一郎がここにいる!』と言われ続けました」と苦笑い。
そして、850ページもの小説を脚本化し、メガホンもとった深川監督は、本作への思いをこう語った。「とても大変な大作に向き合うことになり、東野さんではなく、深川という作家が、僕の切り口で作ったらこうなるというものを見せようと思いました。笹垣の眼差しを僕の眼差しとして、大切に作りました」。
最後に堀北も力強く本作をアピール。「人の暗い部分や汚い部分がいっぱい描かれています。普通なら避けて通りたいし、できれば見たくないと思いますが、私たちキャストやスタッフが、辛いものに真正面から向き合って作りました。決して人ごとと思わずに見ていただけたら嬉しいです」。フォトセッションでは、雪穂と亮司の関係性、光と影をイメージした黒と白のバラの花束も用意された。
堀北、高良、船越が深川監督のメガホンの下、抑制のきいた熱演を見せている映画『白夜行』。小説の世界観そのままに、丹念に綴られた宿命的な愛の結末にあなたは何を思うだろうか? 重厚な人間ドラマをじっくりと堪能してほしい。【Movie Walker/山崎伸子】