アカデミー賞3冠!アルフォンソ・キュアロン監督が『ROMA/ローマ』の秘密を明かす
ーー映画館のシーンで上映されていた作品は、ジェラール・オウリー監督の『大進撃』(66)と、ジョン・スタージェス監督の『宇宙からの脱出』(69)。この2本を選んだ理由は?
「両方とも当時映画館で上映されていて、何度も何度も観た作品なんだ。とくに『宇宙からの脱出』は『ゼロ・グラビティ』でもオマージュを捧げた作品なので、絶対に登場させなきゃと思っていたんだよ(笑)。実はこの『ROMA/ローマ』と『ゼロ・グラビティ』、そして『宇宙からの脱出』には共通している部分があって、それは主人公が孤独を感じていることだ。人間というものはそもそもそういう存在であって、それを救うことができるのは唯一、人と人との関わりなのだということを描きたかった」
ーーなるほど。ところで本作は65mmフィルムで撮影され、ドルビーアトモスなど音響設計も徹底的にこだわられている。劇場公開を前提とされた作品だと思っておりましたが、Netflixには自らアプローチされたと聞きました。
「そうだよ。メキシコを舞台にしたスペイン語で白黒の作品だから、劇場公開が限定的なものになると最初からわかっていたんだ。だけど大切なことは、なるべく多くの人にこの作品を観てもらうことだ。僕らがアプローチした時、Neflix側は作品の表面的な部分にフィルターをかけることなく、作品の内側にあるエモーショナルな価値を重視してくれたし、こうして世界中で劇場公開が叶ったということもNetflixと組んだおかげ。とにかく感謝しているよ」
ーーカンヌ国際映画祭での論争もありましたが、Netflixの存在は今後、映画にどのような変化をもたらすと考えていますか?
「Netflixはすでに映画の見方というものに影響を与えてくれていると思っている。そして映画作りの面でも、彼らは世界中をハリウッドの基準でコントロールすることなく、それぞれの国のローカルプロダクションの制作の仕方を大切にしている。あとは劇場体験とのバランスをどう取っていくかが重要になってくる。映画作家にとって、映画館で映画を観てもらえるということは映画作りの根源的な部分でもあるからね。少なくとも、多様性を持つことで映画は進化していく。その意味では誰も足を踏み入れたことのなかったテリトリーに足を踏み入れているNetflixに、僕はすごくワクワクしているんだよ」
ーー本作を家で観る際、監督のオススメの鑑賞環境は?
「ああ、それは公式Twitterでも紹介しているから、そっちもチェックしてくれると助かるな(笑)。もし家に5.1chや7.1chのサラウンド設備が整っていれば映画館で観るのと同じ体験をしてもらえるはずだ。ステレオでも、この映画の中に自分が入り込めるようなレベルを見つけてくれれば嬉しいな。ヘッドホンを使うのもいいと思うよ!」
ーー監督は普段どのような環境で映画を?
「新作はできるだけ大きなスクリーンで観たいから、劇場に行けるタイミングまで取ってあるんだ。でも最近は忙しくて全然観ていないんだよね…。『女王陛下のお気に入り』や『ブラック・クランズマン』も気になってるし、是枝監督が大好きだから『万引き家族』も早く観たいんだ!」