阿部純子、日露戦争時代のロミジュリ映画『ソローキンの見た桜』に懸けた想い
『孤狼の血』(18)でヒロインを演じたことも記憶に新しい阿部純子の最新主演映画は、日露戦争時代を舞台に国境を越えた愛を描いた日露合作映画『ソローキンの見た桜』(3月22日公開)。史実に基づくラジオドラマが原作ということで、阿部は当時の時代背景を徹底的にリサーチし、戦火のヒロインゆい役と、現代を生きる桜子役の一人二役にトライした。
新人テレビディレクターの高宮桜子(阿部純子)は、先輩の倉田史郎(斎藤工)と共に、ロシア人墓地の取材をする。その後、桜子は祖母の菊枝(山本陽子)から、自身のルーツがロシアにあると聞かされ、日露戦争時代に看護師をしていた先祖である武田ゆい(阿部純子)の日記を見せられる。日記によると、日露戦争時代にゆいは、ロシア兵将校ソローキン(ロデオン・ガリュチェンコ)と運命的に出会い、互いに惹かれ合っていったようだ。
阿部は本作の主演が決まった当初、大きなプレッシャーを感じたという。「主演で一人二役、しかも日本とロシアの合作ということで、そんな大役が自分に務まるのかというプレッシャーと、頑張るしかないという強い責任感がありました。でも、あまり一人で考えすぎずに共演者の方々やスタッフさんを信頼し、皆さんに助けていただこうと気持ちを切り替えました。おかげで楽しく撮影できたと思います」。
脚本を書き、メガホンをとったのは、イッセー尾形が昭和天皇を演じて話題を呼んだ『太陽』(05)のメイキングを務めた新鋭、井上雅貴監督。初の長編映画『レミニセンティア』(16)でもロシア人俳優を起用し、ロシアで撮影を敢行した井上監督が、今回もその経験を活かし、日露のキャストやスタッフをまとめ上げた。
阿部は今回の現場について「演者とスタッフさん含め、みなさんが流動的に動いていて、みんなで映画作りをしていくというスタイルがとても新鮮でした」と振り返る。ソローキン役のロデオン・ガリュチェンコとの共演シーンについては、井上監督も交えて密にディスカッションし、撮影していったそうだ。
「井上監督がおっしゃっていたのは、『日本人とロシア人の考え方や価値観は違うけど、どれも正しくて、間違いではないから、現場で話し合って良いものを作っていきたい』ということでした。私はそういうスタイルの撮影が初めてだったので、最初は戸惑いましたが、確かに『自分はこう思う』ということをきちんと言葉で伝えることは、とても大事だなと思いました」。