『南極料理人』や「深夜食堂」シリーズ、日本映画の中の料理を語るトークショーがハリウッドで開催!
フードスタイリストとは、映画やドラマの中に映る料理を準備する仕事。人気フード・スタイリストの飯島奈美は、映画では『かもめ食堂』(05)、『そして父になる』(13)、『海街diary』(15)、公開中の『ねことじいちゃん』など、ドラマでは「ごちそうさん」「カルテット」などたくさんの作品に関わってきた。もともとCMの仕事をしていたところ、『かもめ食堂』で映画を手がけたことがきっかけで、見た目の麗しさだけでなく、おいしさが画面から伝わってくるような料理を映像の中で作り続けている。彼女が劇中の料理を手掛ける「深夜食堂」シリーズはNetflixにて世界配信されているだけあり、アメリカでもファンが増えている。
ロサンゼルス、ハリウッドにあるジャパン・ハウスで開催された映画と食のイベントにて、飯島氏の料理をフィーチャーした上映会が行われた。上映作品は、堺雅人主演の『南極料理人』(09)。映画を鑑賞した後に、映画の中で主人公たち南極観測隊が食するおにぎりとエビフライのサンドウィッチ(劇中ではロブスター)が振舞われた。会場を埋め尽くした日本映画ファン、日本食ファンからは、映画で観た料理をその場で食べられる幸運に感嘆の声があがっていた。
上映後のQ&Aでは、飯島氏の仕事や『南極料理人』で描かれていた料理に関する質問が多数寄せられた。映画撮影の裏話として、撮影前に料理人役の堺雅人とおにぎり作りを練習したところ、堺はまるで機械のようにきれいなおにぎりが作れるようになったが、整いすぎていて手作りに見えないということで少し手加減をして作るようにしてもらったというエピソードが披露された。また、「フード・スタイリストとして心がけていることは?」という質問には「自分の表現をしないことがフード・スタイリストの表現だと思っています。自分が作りたい料理ではなく、そのシーンに合ったもの、自然に見えるものを考えることが私の仕事です」と答えた。また、「ハリウッド映画でもぜひフード・スタイリストをやってみたい」と伝えたところ、会場を訪れていた映画プロデューサーから名刺を渡されたそうだ。
『そして父になる』『海街diary』といった是枝裕和監督作品、そして「深夜食堂」(英題:Midnight Dinner)はアメリカでも人気が高く、話題が「深夜食堂」に渡ると、会場から拍手が起きていた。ストリーミング事業の台頭によりアニメや映画などの映像作品から文化を知ることが容易になった昨今、このようなイベントは映画の世界、そして日本の食卓を世界に伝えるとてもよい試みだと思う。このイベントを主催したジャパン・ハウス・ロサンゼルスでは、今後も映画と食をつなげるイベントを行っていく計画があるとのことだ。
取材・文/平井伊都子