あいみょん、あふれる“しんちゃん愛”「しんちゃんと成長してきた。いい曲もたくさんある!」
幅広い世代を魅了しているシンガー・ソングライターのあいみょんが、『映画クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン ~失われたひろし~』(公開中)の主題歌を担当する。「女性シンガー・ソングライターの中で、たぶん私が一番しんちゃんを好きです!」というあいみょんだが、インタビューを試みると「主題歌や挿入歌もいい曲がたくさんあるんです。しんちゃんの話をしだすと止まらない」と熱弁するなど、予想の遥か上をいく“しんちゃん愛”を吐露。「ベタだけれど…」と前置きしながらも、とりわけお気に入りだというのが『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』(01)で、「古きよきものを大事にしながらも、新しい時代を進んでいくことを受け入れていく。そういったことをこの作品からすごく感じた。私もそうありたいな、と思う」とアーティストとしての刺激もたっぷりと受けている様子。あいみょんの、本気すぎる“しんちゃん愛”に迫る。
本作は、5歳の幼稚園児、野原しんのすけが巻き起こす騒動を描いた臼井儀人のコミックを基にした人気アニメの劇場版第27弾。新婚旅行で訪れたオーストラリアの秘境で、突然に姿を消した父、ひろしの救出に奔走する野原一家の姿を描く。
大のしんちゃんファン!抜てきに「しんちゃんとお近づきになれた」と喜び
本作のために主題歌「ハルノヒ」を書き下ろしたあいみょんだが、「私は6人兄弟なんですが、兄弟も『クレヨンしんちゃん』を観ていたし、いつというタイミングもわからないくらい、小さなころから自然と観ていました。非現実的なことを描いているけれど、現実的な部分が垣間見えるのが、すごくいいなと思う」と家族でずっと観続けていたシリーズだけに、今回の抜てきに「家族もみんな喜んでいて。妹と弟は、『いままでの出来事で一番すごい!』と言ってくれています。妹や弟にとっては、紅白出場よりすごいのかもしれません。そう言ってもらえて『よかったな』と思いましたし、しんちゃんの映画の歴史に加われると思うと、純粋にうれしい。お近づきになれた」と笑顔をあふれさせる。
「ハルノヒ」という曲名は、野原一家のホームタウンである“春日部”に由来。歌詞の内容も、「北千住のプラットホーム」という出だしから、本気のファンならではのフレーズにあふれている。北千住駅は、ひろしがみさえにプロポーズした場所なのだ。「今回の映画のテーマが“新婚旅行”だと聞いた時から、すぐに『ひろしとみさえのプロポーズの話を書こう』と思って。歌詞は、悩むことなく書けました。私の『好き』という想いのすべてを作品に込めたいと思って、しんちゃんや野原一家への愛を詰め込みました」とあいみょんから野原家へのラブレターのようなものであると話し、「今回の映画では、ひろしとみさえの付き合いたてのシーンも、回想として描かれています。いつもドタバタな2人にも恋愛をしていた時期があると思うと、すごくグッときますよね」と映画の内容にもたくさんの愛を感じたという。
懐かしさと新しさ…『嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』から受けた刺激
映画の中で傑作だと思うのは「やっぱり、『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』です」と語る。しんちゃんが東京タワーを駆け上がって、秘密結社のリーダー、ケンの足にしがみつくシーンに「泣ける!ものすごく感動した」そう。「古きよきものを大事にしながらも、新しい時代を進んでいくことを受け入れていく。そういったことをこの作品からすごく感じた」というが、それは、ノスタルジーを感じさせる楽曲もありながら、常に挑戦を忘れない、アーティスト・あいみょんの姿とも重なるように感じる。
「私もそうありたい」という彼女は、本作からたくさんの宝物をもらったと続ける。「『オトナ帝国』をきっかけとして、挿入歌に使用されていた吉田拓郎さんやベッツィ&クリスさんを知ることもできた。私の初めて買ったレコードは、ベッツィ&クリスさんの『白い色は恋人の色』なんです。岡本太郎さんの『太陽の塔』を教えてくれたのも、『オトナ帝国の逆襲』です。岡本太郎さんは、私の尊敬する方。大人になってから観返すとまた違った味わいがあって、『オトナ帝国の逆襲』は繰り返し観ています。そう思うと、いろいろなものに出会わせてくれたしんちゃんに、感謝や恩返しの意味も込めたものが、今回の楽曲かもしれません」。
“しんちゃん愛”が爆発!「しんちゃんと成長してきた」
“しんちゃん愛”について思いの丈を爆発させてもらうと、好きなキャラクターは「まつざか梅さん。いいキャラしているんです」と告白。映画版では「『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ 歌うケツだけ爆弾!』も泣けます。ひろしが、ロケットから落ちてきたシロとしんちゃんを受け止めるシーンがたまらない!名シーンだらけです。『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!夕陽のカスカベボーイズ』もいいですね。次にしんちゃん映画の実写化があるとしたら、これじゃないかと思っているんです」とオススメ作品をアピール。
「主題歌や挿入歌もいい曲がたくさんあるんです!」とも。「映画の主題歌で印象深いのは、小林幸子さんの歌う楽曲です。『オトナ帝国の逆襲』の主題歌『元気でいてね』や、『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶジャングル』の『さよならありがとう』も名曲。これはしんちゃんとひまわりの兄弟愛が描かれていて、ストーリーもものすごくいいんです…。『映画クレヨンしんちゃん 爆発!温泉わくわく大決戦』の同時上映で歌われた、みさえの便秘を歌った『私のささやかな喜び』もミュージカル調でいいし、『ダメダメのうた』もメッセージ性があっていいなあ。妹と毎日、歌ってました」と止まらない。
「しんちゃんと成長してきた感じです。しんちゃんのやっていることって、真似したくなりますしね。しんちゃんって、ファッションと同じですね」としんちゃんが憧れの存在でもあった様子。クールな雰囲気を身にまといながら、“しんちゃん愛”を熱心に語るあいみょん。そんなギャップも大いに魅力的だ。
取材・文/成田 おり枝