松岡茉優、初のアニメーション映画主演に手ごたえ抜群!「今後のお仕事に絶対活かせる」
「映画クレヨンしんちゃん」シリーズや『河童のクゥと夏休み』(07)など、幅広い世代の心に響くアニメーション作品を次々と送りだし、国内外から高い評価を獲得している原恵一監督。『百日紅〜Miss HOKUSAI〜』(15)以来4年ぶりに手掛けた最新作『バースデー・ワンダーランド』が4月26日(金)より公開される。このたび本作で主人公のアカネの声を務めた松岡茉優に、声優業に挑む心構えや原監督の印象などを聞いた。
児童文学作家、柏葉幸子の「地下室からのふしぎな旅」を原作にした本作は、“誕生日”という特別な日に起こるワンダーなできごとを描いたファンタジー。翌日に誕生日を控えた少女アカネの前に、謎の大錬金術師のヒポクラテスとその弟子のピポが現れ、彼らが住む世界の危機を救ってほしいと請う。好奇心旺盛な叔母のチィに促され、骨董屋の地下の扉の先からつながるワンダーランドに足を踏み入れたアカネは、“救世主”として大冒険を繰り広げていくことに。
2016年に公開された『映画 聲の形』や、ディズニー/ピクサーの『カーズ/クロスロード』(17)の吹替えなどで声優の経験がある松岡だが、アニメーション作品で主演を務めるのは本作が初めて。「声優の仕事と俳優の仕事はまったく違うタイプの仕事だと思っていますが、俳優である私に声優のオファーをいただいたからには、精一杯向き合いたい。失礼のないように真正面から挑戦したいと思いました」と、本作に臨むうえで抱いた心構えを教えてくれた。
そんな松岡が原監督とタッグを組むのは『はじまりのみち』(13)以来6年ぶりのこと。松岡は同作で初めて実写映画に挑戦した原監督の演出について「現場では細かい指示を出してくださるタイプではなく、俳優さんたちを導いてくれる監督という印象でした」と振り返る。しかし本作では原監督のホームグラウンドであるアニメーション作品ということもあってか「『息遣いを荒くしてほしい』や『前のシーンと比べてこのくらいに!』と、録音ブースに入った瞬間から、とても細やかな指導で原さんのイメージを伝えていただきました」と、生身の俳優が演じる実写映画と、ゼロから世界を創りだすアニメーション作品の違いを肌で感じたようだ。
劇中で松岡が演じるアカネというキャラクターは自分に自信がなく、思ったことを言えない内気な性格の女の子。「声を明るくしたり、舌足らずな感じにしたほうがいいのかと考えていましたが、大先輩である山寺宏一さんに相談したら『僕は茉優が13歳のころから知っているけど、そのころから声が変わってると思う?』と言われてハッとしました」と明かす松岡。「声優さんのような技術的なアプローチよりも、アカネという役柄に寄り添って、俳優の仕事と変わらない気持ちで挑むことができました」。
大九明子監督の『勝手にふるえてろ』(17)と是枝裕和監督の『万引き家族』(18)で第42回日本アカデミー賞の優秀主演女優賞と助演女優賞をダブル受賞するなど、めざましい活躍を続けている松岡。初のアニメーション映画主演は、彼女のキャリアにおいて非常に大きな経験になったようで、「私は“主人公”という役割は“受け手”なのだと考えています。なにか物事が起こったり、ほかのキャラクターが際立ったりするシーンではサブに回る。それをアニメーション作品でできたことは、今後のお仕事に絶対活かせることだと思います」。そして「原監督の作品に主人公で出させていただいたことは、人生のうちに何度も起こることではないと思います。いつか私に子どもができた時に、見せてあげたい映画になりました」と、本作での演技に確かな自信をのぞかせていた。
取材・文/久保田 和馬