愛らしい黒ネコも登場!倍賞千恵子&藤竜也、初日舞台挨拶で同世代の大女優への憧れを語る
「娚の一生」や「姉の結婚」などで知られる漫画家の西炯子による「お父さん、チビがいなくなりました」を、『毎日かあさん』(11)の小林聖太郎監督が映画化した『初恋〜お父さん、チビがいなくなりました』の公開初日舞台挨拶が10日、新宿ピカデリーにて開催。倍賞千恵子、藤竜也、市川実日子、小市慢太郎、西田尚美と小林監督、そして劇中に登場するネコのりんごが登壇した。
本作は、長年連れ添ってきた夫婦が初めて互いの気持ちに向き合う姿を描いた心温まるラブストーリー。3人の子どもが巣立ち、人生の晩年を夫婦2人と飼いネコのチビで暮らしている勝と有喜子。ある日、有喜子が末娘の菜穂子に「お父さんと別れようと思っている」と告げたことから大騒ぎに発展。そんななか、喜子の心の拠り所だったチビが突然姿を消してしまう…。
「撮影中には『日本中の奥様方から嫌われるようにやってください』と言われてました」と冒頭の挨拶からユーモラスに語る藤。劇中では無口で頑固、家ではなにもしないという、絵に描いたような“昭和の男性像”を演じているが、28年ぶりに夫婦役として共演した倍賞からは「本当の藤さんはとても優しい方。奥様を大事にしてらっしゃって、いつも『ありがとう』とおっしゃていて素敵だなあと思います」との言葉が。そして「映画の中では口を聞いてくれないお父さんなので、撮影の時もあまりそばにいてくれないので寂しかった」と述べ「台本をいただいた時に、夫婦の中に強い愛があるという点がすごく好きで、この仕事を受けさせていただきました」と振り返る。
一方で、自身も劇中の夫婦同様に結婚50年を迎えるという藤は「この仕事をやらせてもらって、改めてわかったことがあります」と前置きをし「親子の関係や兄弟の関係は誰が何しようとも切れない。けれど夫婦は50年連れ添っていても紙一枚で赤の他人になっちゃうんだなと考えたら、ゾッとしました。夫婦の絆というのは大変脆弱なんだと、気を付けなきゃいかん、油断しちゃいかんと思うようになりました」と語った。
劇中で家族を演じていた5人は、舞台挨拶中も仲睦まじい様子で、長女・祥子を演じた西田は「短い撮影なのに、すごい長い間家族だったような気分になって、本当に居心地が良かった。打ち上げで会った時も家族と再会した気持ちになって、演技を超えていた。なかなかそういう現場ってないです」と語り、長男・雅紀を演じた小市も「家族感があって濃密な時間でした。不思議なくらい実家感がありました」としんみり微笑んだ。
そして昨年5月にこの世を去り、本作が遺作となった星由里子について倍賞は「撮影が終わって一月くらいでしたから、ものすごくびっくりしました」と振り返り「背筋をぴしっとしていたり、折々に鏡を見ていたり、スターの人ってこうあるべきなんだなって思いました。東宝の大スターの星さんと日活の大スターの藤さんがデートしてるシーンを、現場でドキドキしながら見させていただきました」と思い出を語る。また藤も「お会いしたのは初めてだったのですが、大スターの女優さんと共演する時にはミーハーになってしまいます」と強い憧れを抱いていたことを明かし、昭和の映画黄金期を共に駆け抜けた大女優の死を悼んだ。
取材・文/久保田 和馬