松坂桃李、許嫁を演じた芳根京子は「しんしんと強く輝く」 結婚観で共感も!
“平成で最も売れた時代小説シリーズ”として知られる佐伯泰英原作の「居眠り磐音」シリーズを、本木克英監督が実写映画化した『居眠り磐音』(公開中)。迫力の殺陣、下町の人情、想い合う男女の姿ありといった“王道の時代劇の誕生”と言える本作で、松坂桃李と芳根京子がせつない恋を紡いだ。そこで、初共演にして、許嫁の間柄を演じた彼らを直撃。時代劇ならではの恋物語に感じた印象や、自身の結婚観までを語り合ってもらった。
本作は、ある哀しい事件により、2人の幼なじみを失い、許嫁の奈緒(芳根)を残して脱藩した坂崎磐音(松坂)が、江戸で用心棒として働き始め、悪に立ち向かう姿を描く。遠く離れてしまったが、お互いを強く想い続け、せつない運命に翻弄されていく磐音と奈緒…。松坂と芳根が、一途な愛を体現した。
「時代劇だからこそ、描ける恋模様。彼らの恋模様は、儚いけれど美しい」(松坂)
今回が初共演となった松坂と芳根。心で固く結ばれた許嫁同士を演じたが、松坂は「磐音という役を作り上げるうえでも、奈緒は大切な存在」と吐露する。松坂と芳根が一緒に過ごした撮影期間はとても短いものだったというが、それはまさに磐音と奈緒の境遇と同じもの。想い合う相手がそばにいない撮影でも、お互いの存在を心に刻みながら磐音と奈緒を演じたという。
松坂は「江戸に行ってからも、磐音の体の中に奈緒や幼なじみの存在が常にあった。芳根さんとは撮影で過ごした時間は短いですが、ずっと一緒に歩いてきた感じがある」と述懐。つらさを抱えて生きる磐音だが、「それこそが時代劇ならではの感情のわき方だと思いました。いまは携帯電話もあるし、連絡が取りたい人とはすぐに話ができますよね。離れてしまうことが、“今生の別れ”というくらいせつないものになってしまうのは、時代劇だからこそ描ける関係だと感じています。時代が違ったら、あんなことにはならない2人。彼らの恋模様は、儚いけれど美しい」と語る。
芳根は「奈緒はほとんどが“一人で磐音さまを想う”というシーンなので、一人だけでの撮影が多かったんです。“離れてしまった磐音さまを一途に想う”という運命に身を投じるのは、苦しい時間でもありましたが、奈緒の一途さには共感できることもあって」と奈緒の恋心にシンパシーを寄せる。「時代は違えど、愛は同じだなとも思ったんです。恋をするって、苦しいけれど楽しいなと思えた。奈緒でいる時間は、松坂さんの顔を思い浮かべながら、磐音さまのことをずっと考えていました」と打ち明けると、松坂は「ちょっと恥ずかしい」と照れ笑いを見せる。
「朝ドラの経験は大きな糧になっています」(芳根)
初共演の感想を聞いてみると、松坂は「磐音が江戸で出会うおこん(木村文乃)が太陽ならば、奈緒は月のような女性だと思いました。しんしんと強く輝くのが、奈緒。芳根さんは、そのイメージにぴったりでした」。一方の芳根は「松坂さんは優しさのあふれる方。穏やかで、磐音のイメージどおりの、心の温かい方」と語るなど、演じた役柄のハマり度を絶賛。松坂は「梅ちゃん先生」「わろてんか」、芳根は「べっぴんさん」でヒロインを演じるなど、NHK連続テレビ小説で存在感を発揮した2人という共通点もあるが、お互いに朝ドラの経験が大きな糧となっているという。
松坂は「自分以外の人生を2人分、生きたような気がしていて。それくらい、幅も広げていただいたと思います。『わろてんか』に関しては、僕はお化けにもなってしまいますからね!あれはおもしろかったなあ(笑)。なかなかできない経験をたくさんさせてもらいました」。
芳根は「私も一度、一生を終えたような気持ちになってしまって。いまは人生の二周目に突入しているよう」とお茶目にニッコリ。「一人の人生だけれど、年齢ごとに感じることや考えることが変わってくる。そういった実感を得られるのは、朝ドラ以外ではなかなかできないこと。大きな糧になっています」と力を込めつつ、「『べっぴんさん』では56歳までを演じて、クランクアップの日が、自分自身の20歳の誕生日だったんです。時空が歪みました!」と告白。松坂は「36歳も若返ったってこと?不思議!」と笑うなど、2人の間に穏やかで心地よい空気が流れる。
「結婚願望、あります!子どもも大好き」(松坂&芳根)
芳根は「朝ドラで、結婚して、子どもができてという役を演じて。当時の私は19歳でしたが、なんだか結婚も現実的なものとして考えることができたんです」とも。「それに昨年は高校のころの同級生が結婚して、もうすぐ子どもも生まれるんです!私も子どもが大好きなので、結婚願望もありますし、いつか家庭を持ちたいなと思っています」という。松坂も「確かに周りでも結婚したり、子どもが生まれたりという人が増えてきますよね。僕も結婚願望、ありますよ!」とキッパリ。「そうだなあ…。30代のうちに結婚できたらいいなと思っています。僕も子どもが好きなので、楽しい家庭になったらうれしいな」と結婚観で共感し合う2人。
時代劇の世界に飛び込み、さらに役者業の醍醐味も感じた様子で、時代劇初主演を務めた松坂は「時代劇ならではの間の取り方、感情の込め方があるんだと知りました」と熱くコメント。「なかでも立ち回りにおいては、セリフがなくても会話が成立するということがわかったのは、大きな糧だなと感じています。殺陣では、斬る相手によって剣の振り方も違ってきます。時代劇ではこういった表現もできるんだと、知ることができました」。芳根は「時代劇は、木村大作監督の『散り椿』に続いて2度目でした。前回は緊張のあまり、ほとんど記憶がなくて…」と苦笑い。「今回、所作などを改めて教えていただいて、さらに時代劇に興味がわきました。次はもっと時間をかけて、参加させていただきたい。またじっくりと時代劇と向き合ってみたいです」と意欲を燃やしていた。
取材・文/成田 おり枝