第72回カンヌ国際映画祭開幕!21歳の最年少審査員エル・ファニングとイニャリトゥ監督に熱視線
フランスのカンヌで、5月14日(現地時間)に第72回カンヌ映画祭が開幕した。史上最年少審査員となる21歳のエル・ファニングは、「若い世代の声を代表する存在といってもらえてとても光栄。楽しみたいと思います」と記者会見で語った。
今年は、審査委員長にメキシコ出身のアレハンドロ・G・イニャリトゥが中南米出身の監督として初めて就任。イニャリトゥとカンヌの関係は深く、2000年には長編初監督作『アモーレス・ペロス』(00)をカンヌ映画祭批評家週間に出品、その後『バベル』(06)で監督賞を、『ビューティフル』(10)でハビエル・バルデムが主演男優賞を受賞しているゆかりの土地であり、「カンヌに中南米初の審査委員長として戻って来たことを喜ばしく思う」と記者会見で語った。
「あなたにとって、映画の定義はなんですか?」という質問に対しては、「映画はSeeではなく、Watchだと思っている。なぜなら、映画は“Experience(経験する)”無限のアートフォームだからだ。世界中の映画を観て、僕らは経験を共有することができる」と語り、毎年議論に上がる配信事業者(Netflix)作品問題にも、自ら切り込んでいった。「フランスには劇場公開映画を保護する決まりがあるから仕方ないけれど、個人的に映画の体裁にはこだわらない。コンピュータで観ることもあるが、経験には変わりがないからだ。例えば、僕がカーステレオでベートーヴェンの曲を聴いているのを100年前の人が見たら、『なんてことだ!』と言うことだろう。これだけ多様性と包摂性に満ちた映画を、多くの人が経験する術を妨げるべきではないと思う。そして、このすばらしいコンペティションのラインナップを僕らは観ることができるけれど、一体この中の何本がアメリカで、そしてメキシコで公開になるだろうか?Netflixはその扉を開けてくれた。人々が、映画を経験する機会を増やしたと僕は考えている」と一気にまくしたてた。
そのほかの審査員のメンバーには、ギリシャの映画監督、ヨルゴス・ランティモス、フランスの漫画家エンキ・ビラル、昨年『Cold War あの歌、ふたつの心』(17)で監督賞を受賞したパヴェウ・パヴリコフスキらが名を連ねている。
ジム・ジャームッシュ監督作『The Dead Don’t Die(原題)』(2020年春公開)のオープニング上映前に行われたセレモニーでも、審査員が1人ずつ紹介され、シャルロット・ゲンズブールとハビエル・バルデムが第72回カンヌ映画祭の開会を宣言し、華やかな12日間の映画祭が幕を開けた。昨年は是枝裕和監督の『万引き家族』がパルムドールを受賞し日本でも大きく報道されたが、今年はコンペティション部門、ある視点部門、特別上映などに日本映画はなく、三池崇史監督の『初恋』(2020年公開)が監督週間にて上映される。また、クエンティン・タランティーノ監督が『パルプ・フィクション』(94)でパルムドールを受賞して25周年の節目の年にブラッド・ピットとレオナルド・ディカプリオW主演の最新作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(8月30日公開)をコンペティション部門に出品。そのほかにもテレンス・マリック、ケン・ローチ、ペドロ・アルモドバル、ダルデンヌ兄弟などカンヌ常連、グザヴィエ・ドラン、ニコラス・ウィンデング・レフンやポン・ジュノといった若手監督の最新作も上映される。パルムドールなど各賞の発表は現地時間5月24日(日本時間25日未明)に行われる。
取材・文/平井伊都子