ダマされること間違いなし!『コンフィデンスマンJP』に見る、脚本家・古沢良太の妙味

コラム

ダマされること間違いなし!『コンフィデンスマンJP』に見る、脚本家・古沢良太の妙味

2018年に月9枠で放送され、人気を集めたテレビドラマの劇場版となる『コンフィデンスマンJP』が絶賛公開中だ。長澤まさみの振り切った演技や、ド肝を抜かれるような驚きの展開が話題となったこの作品の世界観を作り上げたのが、オリジナル脚本を担当している古沢良太だ。

映画では、香港を舞台に物語が展開する
映画では、香港を舞台に物語が展開する[c]2019「コンフィデンスマンJP」製作委員会

詐欺師などを主人公に、騙し騙され、ストーリーが次々と展開していくミステリー“コンゲーム”をテーマにした本作。主人公のダー子(長澤まさみ)、ボクちゃん(東出昌大)、リチャード(小日向文世)の詐欺師たちが、卑劣な方法で金を荒稼ぎする欲まみれの悪党たちから、鮮やかな手口で大金を騙し取るというもの。

騙しのターゲットとなる香港マフィアの女帝を竹内結子が演じる
騙しのターゲットとなる香港マフィアの女帝を竹内結子が演じる[c]2019「コンフィデンスマンJP」製作委員会

香港を舞台にした映画版では、その冷酷さから“氷姫”の異名を持つマフィアの女帝ラン・リウ(竹内結子)をターゲットにするも、なかなか策が講じず苦戦するダー子たち。その前に、天才詐欺師のジェシー(三浦春馬)や、さらに自分を騙したダー子たちに恨みを抱く日本のヤクザ、赤星(江口洋介)が現れ、三つ巴の戦いが繰り広げられていく。

長澤まさみ扮するダー子は、常識にとらわれない無軌道な詐欺師
長澤まさみ扮するダー子は、常識にとらわれない無軌道な詐欺師[c]2019「コンフィデンスマンJP」製作委員会

古沢作品といえば、『ミックス。』(17)などで見られたような、個性豊かなキャラクターたちが特徴的。本作にも、主人公のダー子をはじめ、いつも振り回されるお人好しのボクちゃん、キザでどこか胡散臭さの漂うジェシーなど、極端にデフォルメされたパンチの強い人物たちが多数登場する。

いつもダー子に振り回されるお人好しのボクちゃんを東出昌大が演じる
いつもダー子に振り回されるお人好しのボクちゃんを東出昌大が演じる[c]2019「コンフィデンスマンJP」製作委員会
ダー子の過去と深い関係のある詐欺師のジェシーも登場する
ダー子の過去と深い関係のある詐欺師のジェシーも登場する[c]2019「コンフィデンスマンJP」製作委員会

なかでもダー子は、やることなすこと常識にとらわれない破天荒で、常に金を優先するという、あくまで詐欺師であって正義の味方ではないグレーな部分を持った人物。同じく古沢の代表作であるドラマ「リーガル・ハイ」に登場した依頼人の感情には一切寄り添わず、あくまで勝つことに専念する主人公の弁護士・古美門研介(堺雅人)とも通じるところのあるような、アンチヒーロー的な面が作品に魅力を与えている。

二転三転するストーリー展開が炸裂する
二転三転するストーリー展開が炸裂する[c]2019「コンフィデンスマンJP」製作委員会

また、古沢作品の代名詞と言えるのが、めまぐるしく話を展開させることで撒いた伏線をラストで見事に回収する脚本の妙。例えば、彼の名を世に知らしめることとなった『キサラギ』(07)。自殺したアイドルの一周忌に集まった5人のファンたちによる交流を描いたこの作品では、密室を舞台に5人の会話だけで物語が展開し、急速にその死の真相を巡るミステリーへとトーンチェンジ。そして、意外なクライマックスに収束する形で観るものを翻弄していった。

コンゲームという題材を扱っている『コンフィデンスマンJP』こそ、そんな古沢の得意とする二転三転するストーリーとの相性が抜群の作品。「目に見えるものが真実とは限らない」というキャッチフレーズ通りの、巧みに張り巡らされた伏線を回収し、観る者を揺さぶるような結末には、誰もが驚かされることだろう。

古沢の魅力が存分に詰まった本作『コンフィデンスマンJP』。ぜひ劇場で鑑賞して、気持ちいいほどに騙されてほしい!

文/トライワークス

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