“尻子玉”の抜き方が話題に!幾原邦彦監督に聞く、アニメ「さらざんまい」のこだわり
「仕事を始める前の、学生時代や子どものころに見てきたものが大きい」
「さらざんまい」はいたるところにギャップがある。コミカルとシリアス、キャッチーとディープ。その振り幅の大きさが、「何が何だかわからないが、続きが気になる」状況を作り上げている。監督の作風に影響を与えているものはあるのだろうか。
「これだけに影響されたというのはあまりないですね。映画、舞台、絵画、音楽などなんでも触れています。ただ、物づくりをしている人はみんなそうだと思うのですが、“自分の仕事はこれだ”とアニメ業界に入ってからは、他の作品にストレートに影響を受けることはあまりありません。むしろ仕事を始める前の、学生時代や子どものころに見てきたものが大きいです」
ちなみに最近観た映画で気に入っている作品を聞いてみると、リメイク版『サスペリア』(18)との答え。「観てないんだったら絶対観た方がいいですよ!“1977年のベルリン”という時代性がよく反映されていて、情報量が多いところがよかった」とオススメをもらった。監督ファンは、こちらもぜひチェックしてみてほしい。
「『友達の話』を作りたいと思っていた」
“時代性”もまた、幾原作品を貫くキーワードの一つだ。本作で象徴的に使われているワードが「欲望」と「つながり」。キーフレーズは「手放すな、欲望は君の命だ」、サブタイトルは「つながりたいけど、偽りたい」(1話)「つながりたいけど、奪いたい」(2話)――など、つながりたい思いと一見相反するワードが並べられる。
「世界的な潮流かもしれないけれど、世の中の人々が物に対する執着を失ってきていると思います。ポジティブに言うと近代化、ネガティブに言えば何かを失ってしまった。では、物の代わりに何を欲望しているのか。21世紀は物質の時代ではなく精神の時代とは言われますね。目に見えやすい精神の欲望として、昨今のSNSブームみたいなものがある。承認欲求は昔からあったけど、かつての『結婚して子どもを作って家を建てる』ようなことではなく、以前ならタレントやアーティストなどごく一部の人が持っていた欲求をみんなが持つようになった時代だと感じています」
主人公の少年3人は、いずれも秘密を抱えている。一稀は「弟のためにアイドルになりすまして女装をしている」、燕太は「一稀に想いを寄せている」、そして悠は「罪を犯した過去を持つ…」。その秘密は、尻子玉を奪う際にお互いに“漏洩”してしまう。
幾原は「ずっと『友達の話』を作りたいと思っていました」と話す。秘密を共有した3人はつながれるのか。つながった先に何があるのか。第6話では一稀たち3人の関係が大きく変化した。第7話(5月23日放送)以降の展開にも注目だ!
取材・文/青柳美帆子
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