「ゴジラ」最新作で芹沢博士役に続投した渡辺謙「大きなスクリーンで観たら誰でも興奮するんじゃないかな」
『GODZILLA ゴジラ』(14)の続編で、ゴジラだけでなくモスラ、ラドン、キングギドラといった人気怪獣も登場する『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』がついに公開中。前作に続いて、キーパーソンの一人である芹沢博士に扮した渡辺謙に、一昨年の夏に米アトランタで行われた撮影を振り返ってもらった。
「芹沢の場合、怪獣=悪という発想ではない」
まずはじめに、前作撮影時に続編の話を聞いていたのか尋ねると、「“2”があるとは聞いていたよ」との答えが。しかし、間髪入れず、「でも、どんな話なのかは聞いていなかった」と続けて、改めて台本を最初に読んだ時の感想を「前作よりもオリジナルの『ゴジラ』が持っていたモチーフに近づきましたよね」と語る。「それを、環境破壊など21世紀に生きる我々が抱える悩ましい問題に踏み込む形でうまく描いたなと思いました」。
前作から5年後を描く本作では、芹沢博士の在り様も変化していると言い、「1作目では、芹沢のバックグラウンドや彼の怪獣たちに対する概念が薄まってしまったけれど、今回はそこが上手く描かれていたし、物語の最前線にいる実感がありました」と強調する。その上で、サンフランシスコを壊滅させたゴジラを死滅させようとする政府に異を唱える芹沢も「完全なゴジラ擁護派ではないと思って」という持論を展開。「未来は結局、誰にもわからないわけじゃないですか?怪獣の存在がどんな意味を持っているのかもわからないわけだけど、芹沢の場合はそこがただの怪獣=悪という発想ではない。その思考は、怪獣=悪とする世論とは次元が全然違うものです」。
さらに、自らの正義を信じて暴走する科学者エマ・ラッセル(ヴェラ・ファーミガ)と芹沢との考え方やスタンスの違いについて、次のように言及してくれた。「彼女は、怪獣たちを使って環境破壊を止めようとする“スクラップ&ビルド”の発想。それに対して“人類を危険に晒すのはどうなんだ?”と反目する芹沢は、いずれにしても微妙な、中間の立ち位置だなと思いながら演じていました」
「怪獣たちが生っぽい。特に飛ぶ系は圧巻!」
謙さんのささやかなこだわりによって現場でディテールが変わったところもあるらしく、「監督に提案するというより、前作の時から勝手にやっていたことですけどね」と笑う。「芹沢はゴジラについて気づいたことをいつもメモしているんですけど、あの手帳は僕が1作目の時に持ち込んだもの。今回、その手帳をマーク(カイル・チャンドラー/エマの元夫の動物学者)に渡すところは、台本では(1作目の時から持っていた)父親の形見である懐中時計を渡すことになっていたんです。でも、前作を観ていない人に対しては説明不足だし、あの時計は芹沢自身が最後まで持っていた方がいいと思って。僕のその意見を、(マイケル・)ドハティ監督も尊重してくれたんですよ」
最後に完成した映画を観た感想を聞いてみると、「その時はもう、いち観客でしたよね(笑)」と子どものような屈託のない表情に。「モスラが登場した時は本当に綺麗だなと思ったし、子供の時に見ていた怪獣よりもクリーチャーたちが生っぽくて驚きました。特に飛ぶ系の怪獣は圧巻だし、怪獣バトルのコリオグラフ(振付)がハリウッド映画はやっぱり上手いですよ。それに昨年、大規模な追加撮影を行ったことでテンポもよくなっているから、これを大きなスクリーンで観たら誰でも興奮するんじゃないかな」。謙さんは、その後にひと言つけ加えることも忘れなかった。「でも、これは単純にスカッとするだけの映画ではない。非常に矛盾に満ちた怪獣という存在を巡る、痛みを伴う人間ドラマがちゃんと描かれているので、怪獣映画ファン以外の方もきっと心を揺さぶられると思いますよ」
取材・文/イソガイマサト