シリアスからコメディまで…稀代の演技派、堤真一の“演じ分け”に注目!

コラム

シリアスからコメディまで…稀代の演技派、堤真一の“演じ分け”に注目!

「ビタミンF」で第124回直木賞を受賞し、これまで多くの著書が映像化されてきた人気作家、重松清。“教師と生徒”を描くことを得意とする重松自身が「特に教師濃度の高い作品集」と語る短編集「せんせい。」に所収された同名短編を原作にした『泣くな赤鬼』が6月14日(金)から公開される。本作で主人公の“赤鬼先生”こと小渕隆役を演じるのは、2012年にNHKで放送されたテレビドラマ「とんび」以来の重松作品への出演となる堤真一だ。

堤真一の演技派俳優ぶりをプレイバック!
堤真一の演技派俳優ぶりをプレイバック![c]2019「泣くな赤鬼」製作委員会

80年代から舞台で目覚ましい活躍をつづけフジテレビ系列の月9ドラマ「ピュア」で一躍注目を集めた堤は、『ポストマン・ブルース』(97)や『MONDAY』(99)など、海外の映画祭でも高い評価を集めるSABU監督の作品に5作連続で主演を務め、ユーモラスで愛嬌あふれる個性派俳優としてのポジションを確立。その後も『39 刑法第三十九条』(99)や『姑獲鳥の夏』(05)などで類稀なる演技力を発揮してきた彼は、のちにシリーズ化される大ヒット作『ALWAYS 三丁目の夕日』(05)で第29回日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞する。

さらに、未曾有の大事故に向き合う記者を緊迫感たっぷりに演じた『クライマーズ・ハイ』(08)、『容疑者Xの献身』(08)、「SP」シリーズなどでシリアスな演技を見せる一方、中年ニートという異色なキャラクターを自然体に演じきった『俺はまだ本気出してないだけ』(13)や、原作の人気キャラクター、松平片栗虎をテンション高く再現した『銀魂2 掟は破るためにこそある』(18)などコミカルな役柄も難なくこなしていく堤。幅広い役柄を演じ分けるスキルの高さで多くの観客を魅了し、絶大な支持を獲得すると同時に、そのフランクな人柄で共演キャストやスタッフからも愛される彼は、まさに日本映画界に欠かすことのできない俳優の一人といえよう。

本作で堤が演じるのは、かつて“赤鬼先生”と呼ばれた野球部監督の小渕隆
本作で堤が演じるのは、かつて“赤鬼先生”と呼ばれた野球部監督の小渕隆[c]2019「泣くな赤鬼」製作委員会

そんな堤が『神様はバリにいる』(15)以来4年ぶりに主演を務める『泣くな赤鬼』で演じるのは、10年前に甲子園出場を目指して強豪チーム・城南工業野球部を率いた高校教師の小渕隆。陽に焼けた赤い顔と鬼の熱血指導から“赤鬼先生”と呼ばれていた小渕だったが、甲子園への夢は叶わぬままいつしか野球への情熱が衰えていき、また彼自身も50代という年齢によって身体のあちこちにガタが出始めていた。

ある時小渕は、病院でかつての教え子で“ゴルゴ”の愛称を持つ斎藤智之と偶然再会する。非凡な野球センスを持ちながら、堪え性のない性格で野球を挫折し高校も中退したゴルゴだったが、20代半ばを過ぎ妻と息子を持つ立派な大人へと成長していた。しかし、そんなゴルゴが末期ガンに侵されて余命半年だと知った小渕。厳しさでしか教え子と向き合うことができなかったあの頃を後悔するようになった小渕は、「また野球がやりたい」と願うゴルゴのために立ち上がることに。

【写真を見る】教師と生徒の絆に感涙必至!柳楽優弥が余命わずかの元教え子を演じる
【写真を見る】教師と生徒の絆に感涙必至!柳楽優弥が余命わずかの元教え子を演じる[c]2019「泣くな赤鬼」製作委員会

同じ小渕隆という役でありながらも“赤鬼先生”と呼ばれていた頃の血気盛んな時代と、熱が冷めきった時代の両方を演じ分けなければならず、堤の演技力がなくしては成立しない役柄といっても過言ではないだろう。完成した作品を観た堤は「自分の作品で泣いたのは初めて」と語っており、本作へ注ぎ込んだ想いが相当なものだったことを伺わせる。はたして劇中で彼がどのような先生像を演じているのか、期待はふくらむばかりだ。

メガホンをとるのは『キセキ-あの日のソビト-』の兼重淳監督
メガホンをとるのは『キセキ-あの日のソビト-』の兼重淳監督[c]2019「泣くな赤鬼」製作委員会

本作のメガホンをとるのは『そして父になる』(13)や『海街diary』(15)など是枝裕和監督の作品で助監督を務め、『キセキ-あの日のソビト-』(17)をスマッシュヒットに導いた兼重淳監督。臨場感たっぷりに再現された野球の試合シーンや、印象的な情景を映しだすことで作品に奥行きを与えるロケーションなど、細部にまでこだわり抜かれた本作。是非とも劇場で、涙なしには観られない教師と生徒の熱い絆を堪能してほしい。

試合シーンやロケーションに、兼重監督の強いこだわりが!
試合シーンやロケーションに、兼重監督の強いこだわりが![c]2019「泣くな赤鬼」製作委員会

文/久保田 和馬


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