ハリウッド版『君の名は。』のヒントが!?川村元気とマーク・ウェブの特別対談を試し読み!

インタビュー

ハリウッド版『君の名は。』のヒントが!?川村元気とマーク・ウェブの特別対談を試し読み!

川村元気とマーク・ウェブ監督のスペシャル対談が実現!
川村元気とマーク・ウェブ監督のスペシャル対談が実現!

キャスティングはどうする?

川村「先日ハリウッド・レポーター誌、バラエティ誌などでもハリウッド実写版の情報が発表されました。シカゴに住む少年と、ネイティブアメリカンの少女が主人公になるということですが、二人のキャスティングについてはどのようなイメージを持っていますか?これについても毎回、バッド・ロボットでの打ち合わせは白熱しますよね」

マーク「簡単に言い表すのは難しく、とにかく慎重にイメージを膨らませているという感じでしょうか。主人公の二人は実際に同じシーンで一緒に演じることはきわめて少ないのに、お互いの身体を共有するので、ばらばらにキャスティングはできません。二人の相性がよくないとだめです。同じ雰囲気なのか、それこそ縁のようなもので結ばれているような、波長が合う二人。例えるならば、会ったこともないのに、踊らせてみたらぴったりと息が合ったりする。そんな二人が理想ですね」

川村「その例えは素晴らしいですね。J.J.もエリック・ハイセラーもマーク監督も日本的な『結び』の概念には深く共感していただいていると感じます。ハリウッド版において、劇場に来る観客にどういう感情を持ち帰って欲しいと考えてますか?」

マーク「一概に言うのは難しいですね、観た人の捉え方はそれぞれだと思うので……としつつ、願いは、なにか温かい気持ちと人と繫がることができたと感じて帰ってもらうことです。私たちはみな、誰かに認めてもらいたいし、結ばれたいと思う。そしてそれは素晴らしいことなのだと、観客の心に残せるとよいな、と」

川村「それはまさに新海誠監督も本作を作るときに、望んでいたことだと思います。僕はいつも『集合的無意識』を大切にして映画を作っています。『みなが感じているけれども、なぜだか言葉になっていない』ものを表現したいと思っているんです。『君の名は。』はまさにそこを突けた映画だと思っています。国境や人種を超えても、同じような事を皆が感じていることを信じて、実写版も作っていきたいですね」

音楽はどうする?

川村「マーク監督は『撮影中に音楽を聴いている』とインタビュー記事で読みました。本作ではどんな音楽を流すイメージを持っていますか?」

マーク「音楽はいつも欠かせません。例えば一切音楽のない映画を観たとしても、音楽のことを考えませんか?なぜこの映画には音楽がないのかと気になるはずです」

川村「本当にそう思います。僕は小説も書くのですが、いつもその時に感じるのは『音楽の不在』です。だからこそ映画において音楽というのは、最大のアドバンテージだとも感じます」

マーク「『君の名は。』では、RADWIMPSが音楽の持つ物語性と旋律の美しさを絶妙に調和させています。これは再現できるものではなく、すべきでもありません。歌詞とは台詞よりも伝えたいことを直接的に明らかにすると日頃から感じています。台詞では言葉外の意味が重要ですが、歌詞では含みを持たせるというよりも意図していることをありのままに表現することが多いです。ハリウッド版での音楽を定義する上でこの考えこそが鍵になると思います。これはニードルドロップ(既成曲挿入)でもスコアでも同じです」

川村「まさに『君の名は。』を作るときにRADWIMPSに期待したのがその部分でした。歌詞が、ときに台詞よりも雄弁に登場人物の心情を語る。その部分を彼らに担ってもらったと思っています。マーク監督の『台詞においては言葉外の意味が重要』というのは心に響きます。それと同時に、僕がマーク監督にお願いしたかった大きな理由がまさに『音楽を使って心情を語る』ということが本作において重要だと思っていたからなんです」



この続きは、是非とも本書を手に取り確認していただきたい。川村は『君の名は。』につづいて新海誠監督とタッグを組む『天気の子』(7月19日公開)など、今後も話題作が目白押し。川村流の企画想像法のすべてが明らかになる本書を読めば、なぜ川村が次々とヒット作を生み出すことができるのか、その理由が見えてくることだろう。映画ファンやアニメファンはもちろん、新たな視点と発想を求めるすべての人の脳内をより豊かにしてくれること間違いなしだ!

文/久保田 和馬

「ブレスト」「ブレスト」
もし、いきなりハリウッドに呼ばれて、巨匠たちと企画会議をすることになったらーー。スピルバーグにウディ・アレン、タランティーノらを相手に、日本を代表するフィルムメイカー・川村元気が空想会議(ブレスト)を繰り広げる。川村はいかに企画を作り、仲間を巻き込み、ものを作ってきたのか。自身の頭の使い方を大解剖した、知的格闘の軌跡。文庫版特典として、ハリウッド版『君の名は。』のマーク・ウェブ監督との対談を新録。

6月14日(金)発売
※電子書籍(フルカラーバージョン)同日配信
定価:720円+税
KADOKAWA刊


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