『きみと、波にのれたら』湯浅政明監督、「僕のヒーローは大友克洋さん、宮崎駿さん。そしてもっと身近にも…」
『夜は短し歩けよ乙女』『夜明け告げるルーのうた』(ともに17)など自由闊達な作風で、日本のみならず世界中を魅了している鬼才、湯浅政明監督の最新オリジナル劇場アニメーション映画『きみと、波にのれたら』(公開中)がいよいよスクリーンに登場する。湯浅監督の「たくさんの人に観てもらいたい」との気持ちから生まれたのは、消防士の青年とサーファーの女の子との運命的な恋を描くラブストーリー。胸に響くシンプルなストーリーに湯浅監督ならではのダイナミックな映像表現も盛り込まれたが、観客の心を動かす映像表現を作りだす秘訣とはなんなのか。また「僕にとってのヒーローは、大きな意味で言うと大友克洋さんや宮崎駿さんなんですが、実はもっと身近にもヒーローはいたんです」という、湯浅監督の憧れの存在までを語ってもらった。
小さな港町に引っ越してきた、サーフィンが大好きな大学生のひな子(川栄李奈)は、ある火事騒動をきっかけに、消防士の港(片寄涼太)と出会い、恋に落ちる。お互いがなくてはならない存在となった2人だが、港は溺れた人を助けようとして、海で命を落としてしまう。大好きな海が見られなくなるほど憔悴するひな子だったが、2人の思い出の曲を口ずさむと、水のなかに港が現れる…。
「ここ15年くらい、『もっとたくさんの人に観てもらえるように』と考えて作ってきた」
独創的な作風でファンの心を鷲掴みにしてきた湯浅監督だが、これまで以上に間口の広い作品に仕上がった。300館規模で公開となる本作に、どのような意気込みで臨んだのだろうか。
「ここ15年くらい、『もっとたくさんの人に観てもらえるように』と考えて作ってきたつもりなんです。よく僕の作品が『あまり人に薦められない』と言われるのは、どうしてなんだろうって(笑)。『夜明け告げるルーのうた』では、ある程度まとまった形で『たくさんの人に観てもらえるように』という想いが示せたので、もっと思い切りよく、そちらのほうに舵を切ってみようと。料理に例えるならば、僕はいつもあれこれやりたくなるんですが、もっとシンプルなもののほうが、皆さんに『おいしい』と思ってもらえるのではないかと想像しながらやっていました」としつつも、「でもいつも通りですよ。挑戦もしているし、いつもの作風をシンプルにした感じ」と、個性やこだわりもたっぷりと込められているという。