【今週の☆☆☆】鬼才監督によるサスペンス『ゴールデン・リバー』、実力派俳優の初監督作『ワイルドライフ』など週末観るならこの3本!
Movie Walkerスタッフが、週末に観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画。2019年下半期の最初の週末となる、7月5日(金)から今週末の公開作品をピックアップ。フランスの鬼才監督によるサスペンス、実力派俳優が監督初挑戦した家族ドラマ、人気バンドの楽曲からインスパイアされた青春ドラマなど、バラエティあふれる作品ばかり!
ジャック・オディアール監督の演出が冴える力作『ゴールデン・リバー』(7月5日公開)
『君と歩く未来』(12)などで人間の獣性をあぶりだしながら、鮮烈なドラマを生み出すフランスの鬼才ジャック・オディアールの新作は、その持ち味を存分に発揮した力作。ブッカー賞候補となった小説を基にして、西部開拓時代の19世紀のアメリカでゴールドラッシュに狂奔する、ならず者兄弟らの群像が描かれる。交錯する欲望が危うい状況を作り出し、スリルは加速。サスペンスに加えて、ユーモアや残酷性をも絡めてキャラクターを深みと共に描き出したオディアール監督の演出が冴える。ワルなのにお人よしという人物を作り出したジョン・C・ライリー、粗暴だが憎めない人間味を体現したホアキン・フェニックスら演技派俳優陣のアンサンブルも素晴らしい。(映画ライター・有馬楽)
繊細にして胸に染み入る家族ドラマ『ワイルドライフ』(7月5日公開)
『ルビー・スパークス』(12)『プリズナーズ』(13)などで独特の存在感を放ってきた実力派俳優ポール・ダノが監督デビュー。公私のパートナーである女優ゾーイ・カザンとの共同脚本により、繊細にして胸に染み入る家族ドラマを完成させた。1960年代、米モンタナ州の雄大な自然を背景に、静かに壊れていく夫婦と親子の関係性を14歳の主人公ジョーの視点で映像化。思春期真っ盛りの少年の心の痛みに寄り添いながら、緩やかに移ろいゆく人生の断片を俯瞰的に捉えたダノ監督の語り口は、長編1作目にして懐の深さを感じさせる。往年の大女優ジーナ・ローランズを彷彿させるキャリー・マリガン、危険な山火事に吸い寄せられていく父親に扮したジェイク・ギレンホールの緊張感みなぎる演技も素晴らしい。(映画ライター・高橋諭治)
どこかゴリッとした感触が残る青春ムービー『いちごの唄』(7月5日公開)
峯田和伸の「銀杏BOYZ」の楽曲からインスパイアされ、人気脚本家の岡田惠和が脚本を手掛けたオリジナルストーリー。その触れ込みだけで、ある程度の観客数の心を掴むだろう。岡田脚本のドラマ「泣くな、はらちゃん」などで演出を務めた菅原伸太郎、初の長編映画作品となる。主人公のコウタを演じるのは、ミュージシャンとしても活躍する古舘佑太郎。コウタの初恋相手“あーちゃん”に活躍目覚ましい石橋静河。偶然2人が再会することから物語が紡がれはじめ、中学時代に交通事故で亡くなった親友・伸二をめぐり、3人の関係が少しずつ明らかになっていく。軽い知的障害を抱えるコウタの不器用で一途な想い同様、どこかゴリッとした感触が残る。(映画ライター・折田千鶴子)
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週末に映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて!
構成/トライワークス