太古の昔、人間と戦った“トトロ族”がいた!? 宮崎駿との仰天秘話を、鈴木敏夫プロデューサーが告白!
「宮さんは、死ぬまで作るしかないと思います」
――いまの宮崎監督の話が出ましたが、『ハウス食品「おうちで食べよう。」シリーズCM』について、制作当時、宮崎監督が昭和30年代に興味を持たれていたと資料に書かれていましたが、どのような点に惹かれていたのでしょう。
「ある雑誌で、“トトロの家を訪ねる”って連載をやっていたんですよね。昭和30年代のいろんな古い家を訪ね歩いて、そこで自分が勉強したことを形にしたかったんじゃないかな。僕が感心するのは、彼の映像的な記憶力です。そういう場に行ったときに写真を撮るなどは絶対しないのに、絵として覚えちゃう。普段、日常的にしゃべっていることは全部忘れるんですけどね(笑)。彼は写真や資料を元に描いている方と違って、自分の目で見たふうに描くから、出来上がったものがほかのアニメーション映画とちょっと違う。写真をもとにアニメーションとしてデフォルメされている方を批判するわけではないのですが、空を実際より高くしたり、雲を全部取って小さくしたり、大きくしたり。そういう遊びはそれでおもしろいんだけれど、やっぱり自分の目で、それを記憶しといて描くっていうのに比較すると、どっちが人間的かって言ったら、宮さんのほうですよね」
「宮さんとは、付き合って42年間経つのかな。そうすると、さすがに全部わかってくるんですが、彼が描くキャラクターには、必ずモデルがいますよね。空想で描けないんですよ。実を言うと、建物も風景もそう」
――観察眼と、写真的記憶法が合体したような。そんなふうに作られているんですね。
「そうそう。だから『そろそろ枯渇してきたな』って思うと、連れだすんです(笑)。例えば『崖の上のポニョ』の時。それで僕は『社員旅行で瀬戸内海行きませんか』と声をかけたんですけど、そうするとね、『イヤだよ俺』なんて言う。でも、無理やり引っ張っていくと、古い建物やなんかを見て回って…ものすごい興味持っちゃうんですよね。社員旅行のあとに『ちょっと、しばらくあそこに居たいんだけど』っていうぐらい。新しい場所へ行くと必ず刺激を受けて、しかも、それを血とし、肉とする人だから。感心しますね」
――そうなると宮崎監督って、やはり創作活動を止められない方なんじゃないですか。
「止められないと思います。もう、引退なんて馬鹿なこと言わないと思う。死ぬまで作るしかないですよ。だって彼から映画作る能力外したら、口うるさい“おジャマじいさん”ですよ。僕だったらイヤですよ!家のなかにあんなのが居たら(笑)」
取材・文/編集部
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