「ストレンジャー・シングス 未知の世界」ほか数々の作品に影響を与えた80年代の映像エンタメ重要キーワード Vol.1

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「ストレンジャー・シングス 未知の世界」ほか数々の作品に影響を与えた80年代の映像エンタメ重要キーワード Vol.1

「ストレンジャー・シングス 未知の世界」の舞台である80年代とはいったいどんな時代だったのか?きらめきを放ち続ける名作を生んだヒト&モノ&コトを解説!

 

スティーヴン・スピルバーグ|ハリウッドを夢工場として輝かせた立役者

『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』(81)撮影時のスピルバーグ(右)とジョージ・ルーカス
『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』(81)撮影時のスピルバーグ(右)とジョージ・ルーカス[c]Everett Collection/AFLO

70年代に『ジョーズ』(75 )、『未知との遭遇』(77)という破格の話題作を放ったスピルバーグは、若くしてハリウッドの帝王となった。80年代には『インディ・ジョーンズ』初期3部作(81〜89)で冒険活劇の面白さを極め、ジュブナイルSFの名作『E.T.』(82)で世界中を感動の渦に巻き込んだ。プロデューサーとしても『グレムリン』(84)、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(85)、『グーニーズ』(85)などに携わり、ハリウッドが夢工場として輝きを放ったこの時代の紛れもない立役者だった。

アクション、ファンタジー、サスペンスの魔術師であるスピルバーグの並外れた技巧、彼が『E.T.』などで創造した名シーンの数々は多くの後進監督に模倣されているが、影響を与えた当の本人は80年代トリビュート映画の決定版『レディ・プレイヤー1』(18)を発表。ポップ・カルチャーへの無邪気なノスタルジーに彩られた映像世界は、実写とCG、現実とバーチャルの融合という実験精神にみなぎっており、今なお時代の先を行く最強ヒットメーカーであることを証明した。

 

ジョージ・ルーカス|スピルバーグとの黄金タッグで時代を牽引

【写真を見る】ルーカスがつくった特撮工房I.L.M.はSF描写を飛躍的に発展させた。
【写真を見る】ルーカスがつくった特撮工房I.L.M.はSF描写を飛躍的に発展させた。[c]20th Century Fox/courtesy Everett Collection/AFLO

『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』(77)でその後のSFブームをつくったルーカス。しかし80年代に彼は1本も監督していない。製作総指揮に回ったエピソード5&6(80、83)は世界を席巻したが、彼自身はストレスで心身共に疲れ果て、監督業から身を引いたのだ。しかし、彼は以前から温めていた連続活劇の様式に基づく娯楽映画の原案をスピルバーグに提供。これが『インディ・ジョーンズ』シリーズに結実した。共に黒澤明の熱烈なファンで、お互いを敬愛する2人は黄金タッグを継続していく。彼が『SW』エピソード1(99)で監督業に復帰したのは、エピソード4から22年後だった。

 

ジョン・ヒューズ|学園ものに革命を起こした青春映画の伝道師

『プリティ・イン・ピンク 恋人たちの街角』でのヒューズ。「ストレンジャー・シングス」にも多大な影響を与えた
『プリティ・イン・ピンク 恋人たちの街角』でのヒューズ。「ストレンジャー・シングス」にも多大な影響を与えた[c]Everett Collection/AFLO

ヒューズは80年代ブームを語るうえで欠かせない重要人物である。監督作『素敵な片想い』(84)や『ブレックファスト・クラブ』(85)、『フェリスはある朝突然に』(86)などに加え、脚本とプロデューサーを務めた『プリティ・イン・ピンク 恋人たちの街角』(86)、『恋しくて』(87)を放った彼は、その後のあらゆる学園ものに影響を与えた青春映画の伝道師だ。

負け犬的な少年少女の思いを等身大の視点でつづった彼の青春映画は単に楽しいだけでない。例えば『ブレックファスト〜』は優等生、ワル、お嬢様など異なるタイプの高校生5人が主人公で、スクール・カーストの序列を明確に描き、米国のハイスクールという共同体の特殊性をあぶり出した。そんな先見的な普遍性に満ちたヒューズ作品は、観る者の“琴線に触れる”シンパシーに満ちあふれている。

 

ブラット・パック|青春映画には欠かせなかった“小僧ども集団”

ジョエル・シュマッカー監督の青春群像劇 『セント・エルモス・ファイアー』
ジョエル・シュマッカー監督の青春群像劇 『セント・エルモス・ファイアー』[c]Columbia Pictures/courtesy Everett Collection/AFLO

ブラット・パックとは80年代に流行した青春映画を彩った若手スターの総称だ。往年の大スター、フランク・シナトラ率いるシナトラ軍団ラット・パックをもじったこの言葉は“小僧どもの集団”という意味である。エミリオ・エステヴェス、ロブ・ロウ、アンドリュー・マッカーシー、アンソニー・マイケル・ホール、デミ・ムーア、アリー・シーディらが中心的存在で、広義ではトム・クルーズ、ケヴィン・ベーコン、ショーン・ペンらも含まれる。MTV風映画の隆盛と密接にリンクしていた当時の青春映画では、彼らをいかに共演させるかが興行的な成功の鍵を握っていた。新社会人の若者たちの恋、友情、仕事を描いた『セント・エルモス・ファイアー』(85)は、主要キャスト7人のうち6人がブラット・パックの面々で、80年代を代表する青春映画として語り継がれている。

【Vpl.2に続く】

文/高橋諭治【DVD&動画配信でーた】

Netflixオリジナルシリーズ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』シーズン1~3独占配信中
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