「ストレンジャー・シングス 未知の世界」ほか数々の作品に影響を与えた80年代の映像エンタメ重要キーワード Vol.2
「ストレンジャー・シングス 未知の世界」の舞台である80年代とはいったいどんな時代だったのか?きらめきを放ち続ける名作を生んだヒト&モノ&コトを解説!
ティーン・ホラー|殺人鬼のキャラ立ち&往年のモンスターの“ジュブナイル”化
ジュブナイル、すなわちヤング・アダルト向けフィクションの80年代映画と言えば、誰もが『E.T.』(82)や『スタンド・バイ・ミー』(86)を思い浮かべるだろう。80年代はそれらジュブナイル“アドベンチャー”だけでなく、“ホラー”も量産された。登場人物が少年少女であるジュブナイル・ホラーは、同世代のティーン層の動員に成功。『13日の金曜日』('80)のジェイソン、『エルム街の悪夢』(84)のフレディという2大怪物キャラは絶大な人気を博し、ホラー史における長寿シリーズの先駆けとなった。さらには狼男映画『ティーン・ウルフ』(85)、バンパイア映画『フライトナイト』(85)、『ロストボーイ』(87)のように、クラシック・モンスターのモダンな“ジュブナイル化”も目を引いた。
また、80年代ホラーの特色として、特殊メイク・アーティストの活躍が挙げられる。『死霊のはらわた』(81)のトム・サリヴァン、『遊星からの物体X』(82)のロブ・ボッティン、『バスケットケース』(82)のジョン・キャグリオンJr.ほか、『ザ・フライ』(86)のクリス・ウェイラス。彼らがつくったグロテスクな怪物の造型や肉体変容シーンは実に強烈で、CG全盛の今もビジュアル・インパクトは失われていない。
80年代は『ハロウィン』(78)の流れを汲み、しばしば平和で美しい新興住宅地が惨劇の舞台となっている。『ポルターガイスト』(82)や『エルム街の悪夢』が代表例で、当時のホラーはサバービアンの不安という“時代”を映していたのかもしれない。
MTV|ドン・シンプソン&ジェリー・ブラッカイマーが映画をMV化
80年代は伝統的なミュージカルとは違う新感覚の音楽映画、ダンス映画が喝采を浴びた時代でもあった。きっかけは1981年のMTV開局。ミュージック・クリップを24時間流し続け、全米の若者に支持された。いち早くMTV方式の演出を採用し、アイリーン・キャラの主題歌やブレイク・ダンスを大胆にフィーチャーした『フラッシュダンス』(83)が爆発的にヒット。これが出世作となった製作のドン・シンプソン&ジェリー・ブラッカイマーは、『ビバリーヒルズ・コップ』(84)、『トップガン』(86)を連打し、80年代を代表するプロデューサーにのし上がった。
他のハリウッド各社もキャッチーな音楽とダンス満載の『フットルース』(84)、『ダーティ・ダンシング』(87)などで大成功。ハリウッドに新たな鉱脈をもたらしたMTVは、“映画のミュージック・クリップ化”を促進し、映画の文法そのものまで変えてしまったのだ。
80'sキーワードは他にも
漫画『北斗の拳』にも影響を与えた『マッドマックス2』(81)と、酸性雨の降る未来像が衝撃的だった『ブレードランナー』(82)のキーワードは【ディストピア】。両作品で描かれた荒廃した地球の未来像は、クリストファー・ノーラン監督の『インターステラー』(14)や『ターボキッド』(15)など多くのフォロワーを生んだ。『ランボー』(82)のシルヴェスター・スタローンと、『ターミネーター』(84)のアーノルド・シュワルツェネッガー。2人の【肉体派スター】は『エクスペンダブルス』(10)で競演。ジェイソン・ステイサムらへアクション魂を継承している。
文/高橋諭治【DVD&動画配信でーた】