婚約者不在の5日間、欲望のまま身体をむさぼる男女…鮮烈な『火口のふたり』ポートレート<写真20点>
数年ぶりの再会をきっかけに、肉体関係の深みにはまっていく男と女の危うい関係を描いた『火口のふたり』(公開中)。その過激さゆえ、予告編の上映が中止になったことでも話題の本作から、男女の赤裸々な瞬間をモノクロでスタイリッシュに捉えた写真が届いたので紹介していきたい。
本作は直木賞作家・白石一文の同名小説を、柄本佑と瀧内公美を主演に迎え、『ヴァイブレーター』(03)、『海を感じる時』(14)など、エロティシズムを幾度となく描いてきた荒井晴彦の監督・脚本で映像化。10日後に結婚を控え、昔の恋人の賢治(柄本)と再会を果たした直美(瀧内)。新生活のため整理をしていた荷物から古いアルバムを取り出すと、そこには一糸まとわぬ2人の姿を収めたモノクロ写真が並んでいた。そして2人は、婚約者が戻るまでの5日間、欲望のままに生きていたあの頃のように身体を重ねていくことに…。
物語のキーとなるこれらのモノクロ写真を撮影したのが、“アラーキー”こと荒木経惟の愛弟子である写真家の野村佐紀子だ。彼女は、これまで男性のヌードを撮り続けてきており、約100名の姿をモノクロで写した400ページにも及ぶ写真集「愛について」が話題に。また、最近ではEGO-WRAPPIN'のアルバム「Dream Baby Dream」の男女が絡み合った官能的なモノクロのジャケット写真でも注目を集めた。
また『二重生活』(16)ではティザーチラシも手掛けており、小型のスパイカムで出演者の表情を捉えた、怪しげな作品の世界観を映しだした写真を撮影。『火口のふたり』の写真もそんな彼女のらしさが出ており、モノクロでスタイリッシュなルックながら、一枚一枚枚らは情感がしっかりと伝わってくる。生々しく扇情的で、恋人同士ならではの表情を捉えた、本作ならではのものとなっている。
作品の公開に先立ち、「野村佐紀子 写真展『火口のふたり』」も新宿のBギャラリーにて9月8日(日)まで開催中。本編未使用カットを含む写真で構成されたフォトストーリーブック「あの頃の『火口のふたり』」も発売されているので、作品をより楽しむためにもチェックしてみてほしい。
文/トライワークス