RPGの基礎を築いたのも彼!『LOTR』『ホビット』の原作者“トールキン”の魅力を知る
『ロード・オブ・ザ・リング』や『ホビット』三部作として映画化された、小説「指輪物語」と「ホビットの冒険」の作者、J.R.R・トールキン。いまのファンタジー作品の基礎を築いたとも言われるトールキンの半生を描いた、『トールキン 旅のはじまり』が公開中だ。長年にわたり世界中で愛読されている物語を書き上げた彼の功績を振り返ってみたい。
1892年に誕生し、1973年に81歳で没したトールキンは、第一次世界大戦に従軍した後、オックスフォード英語辞典の編集作業を経て、大学の教鞭に立ち英語学などを教え始める。教職のほか彼は、文献学者、作家、詩人としても活躍し、その中で37~55年にかけて「指輪物語」や「ホビットの冒険」を発表している。
エルフにドワーフ、ホビットのキャラクター像を確立!
“中つ国(ミドルアース)”と呼ばれる架空の大陸を舞台に、ドラゴンや魔法使いのほか、エルフ、ドワーフといった様々な種族が登場するこれらの物語は、後のゲームや映画、アニメーションなど多くのファンタジー作品に影響を与えたと言われている。特に、不老不死で美しく、尖った長耳で弓を武器とするエルフや、ずんぐりとした体躯に長髪&髭、手先が器用なのに戦斧を振り回す粗っぽさを見せるドワーフ。人間と子どもと代わらない見た目で平和と食事を愛するが、「指輪物語」「ホビットの冒険」で重要な役割を果たすフロドやビルボのように過酷な運命に立ち向かうタフさも持ったホビットなど、現代では当たり前となった想像上の種族のキャラクターやイメージを確立した。
“中つ国”という世界の言語や数千年にわたる歴史を構想
中つ国を舞台にしたこの壮大な物語においてトールキンは、歴史や言語、地形、登場人物の家系にいたるまで細部にわたるあらゆる設定を施している。特に言語学の専門家としてアングロ・サクソン語や古ノルド語、フィンランド語など多くのヨーロッパ言語を研究し、精通していたトールキンは約15の人口言語を発明したという。中つ国に登場する、エルフ語のクウェンヤやシンダール語といった言語も彼が発明したものだ。
また、トールキンは最古の英文学の一つ「ベーオウルフ」など、様々な文献や神話なども研究しており、それらが「指輪物語」や「ホビットの冒険」の世界観にも影響を与えたとも。この2作品以外にも、トールキンは中つ国に関する膨大な草稿を死去するまで書き続け、後に彼の息子・クリストファーによって編纂され、「シルマリルの物語」「終わらざりし物語」「中つ国の歴史」として出版されている。
「シルマリルの物語」では、世界の創造やエルフ、人間、ドワーフの誕生、シルマリルと呼ばれる宝玉をめぐる古代の戦い、「指輪物語」に登場するアラゴルンとアルウェンの祖先であるベレン(人間)とルーシエン(エルフ)の種族を超えた愛など、中つ国における様々な歴史的な出来事を知ることができる。一つの世界における創造から数千年にわたる年代期を一人で構想したと思うと、その想像力は凄まじい。