【今週の☆☆☆】“もう1人の自分”が襲ってくる『アス』や、現代に観るべき西部劇『荒野の誓い』など週末観るならこの3本!
Movie Walkerスタッフが、週末に観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画。今回は、9月6日から今週末の公開作品をピックアップ。自分たちそっくりの何者かに襲撃される一家を描くスリラーに、スコット・クーパー監督の渾身の西部劇、哀愁ただよう老人の旅路を描くヒューマンコメディなど、バラエティあふれる作品ばかり!
平凡な暮らしが突然ピンチに…!?精神的に攻めてくるスリラー『アス』(9月6日公開)
人種をテーマにした戦慄のスリラー『ゲット・アウト』(17)で、昨年度アカデミー賞にて脚本賞を獲得したジョーダン・ピール監督の最新作。幼い頃に迷子になったことで心に傷を負ったアデレードは、夫と2人の子どもとのバケーションのさなか何者かに襲われる。やがて姿を現した“何者か”は、自分たちとまったく同じ顔をした4人の親子だった…。ピールの持ち味は、日常から突然“非日常”へと突き落とされてゆく様を、観る者に体感させる演出力。自分の姿を目撃するドッペルゲンガー(自己視幻覚)を題材にした今作も、ごく平凡な家族が味わう不条理な恐怖が絶妙な語り口で描かれる。果たして“4人の親子”の正体は?生理的な怖さでなく、精神的恐怖を追求したワザありのスリラーだ。(映画ライター・神武団四郎)
“インディアン嫌い”を改心…人種差別を見つめ直す西部劇『荒野の誓い』(9月6日公開)
西部劇には古くさいイメージもあるかもしれないが、本作はそんな印象を覆す。末期ガンに侵された戦争犯罪者の老インディアンを、居留地に護送する、軍人のミッションの物語。彼らの旅路には凶暴な部族が待ち受けている。インディアン嫌いの主人公は、彼らの助けなしでは生き延びられないことを悟り、手を組んで行動を起こす。そんな状況が、現代の人種差別に対して投げかけるメッセージは、このうえなく重い。『クレイジー・ハート』(09)の鬼才スコット・クーパーによる演出は、19世紀の人物を21世紀に通じるキャラクターとして的確に描き出す。キャラに血を通わせたオスカー俳優、クリスチャン・ベールの演技も見事。ヘイトが横行する現代だからこそ観るべき力作だ。 (映画ライター・有馬楽)
偏屈ジジイのノスタルジックな旅路『ラスト・ムービースター』(9月6日公開)
昨年亡くなったバート・レイノルズが、本人をモデルにした元映画スターを演じたヒューマンコメディだ。昔の名声はどこへやら、今では孤独な独り暮らしの主人公が田舎町で開催される映画祭に招待される。ところが参加してみると、映画祭とは名ばかりのサークルのような集い。プライドが傷いた老人は映画祭を放り出し、故郷の町を訪ねることにするのだが…。
最近、往年のスターのキャリアを総括する“遺書”みたいな映画が増えているが、これも同じカテゴリーの一本。しかし本作は、大衆向けエンタメのスターであったレイノルズらしく、少々ベタな笑いと感動で押しているのがいい。バート・レイノルズを知る人も知らない人も、愛すべき偏屈ジイさんに魅了されるだろう。(映画ライター・村山章)
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週末に映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて!
構成/トライワークス