【連載】「尾崎由香のぴゅあっとムービー」9月 今月の映画:『楽園』
映画好きで知られる声優・尾崎由香が、鑑賞した映画や自身のあれこれについて語る「尾崎由香のぴゅあっとムービー」(「月刊シネコンウォーカー」&「月刊イオンエンターテイメントマガジン」連載中)。今月は、「悪人」「怒り」を手掛けた小説家・吉田修一の「犯罪小説集」を『64 -ロクヨン-』の瀬々敬久監督が映画化したサスペンス大作『楽園』(10月18日公開)を取り上げる。
ある地方都市の“Y字路”で起こった少女失踪事件を軸に、容疑者として追い詰められる青年・豪士、失踪した少女の親友だった紡、Y字路に続く集落で村八分になる男・善次郎といった3人の運命が交錯していくさまを映した本作。綾野剛、杉咲花、佐藤浩市ら演技派俳優陣が集結し、事件に翻弄され、追い詰められ、もがき苦しむ姿をそれぞれ熱演している。ずっしりと心に残る、重厚なこの物語を、彼女はどのように観たのか?
ヒューマンサスペンス系はよく観に行くんです
「悪人」と「怒り」はどちらも観ていたので、気になっていた「楽園」を観ました。この作品も重い映画で、登場する人物の一挙手一投足まで見逃せない。久しぶりに張り詰めた緊張感を味わえて、最後まで気が抜けなかったです。
キャストの皆さんは、とても難しい役を演じていらっしゃってすごかった。特に佐藤浩市さんの“あるシーン”は、追い詰められた人間の末路のようなものを見た気がして衝撃的でしたし、せつなさが感じられました。
わたしは東京育ちなので、地方で暮らすことについてあまり想像したことがなかったんですが、人同士の距離が近いことによる人間関係の難しさについても考えさせられましたね。意味深なシーンも多かったですし、なぜタイトルが「楽園」なのかもあれこれ考えさせられました。
実はこういったヒューマンサスペンスなジャンルや、人間の弱さや汚さだとかが描かれているような作品は好きで、よく映画館に一人で観に行くんです。明確な答えが提示されなかったりするので、家に帰ってからもあれこれ考え込んだり…。ただ、引きずって人間不信にならないように(笑)友達とお話ししてなるべく気分転換するようにしています。「こんな映画観たよ!」って。
ちなみに、わたしが人に映画を薦める時は、その人の好きなジャンルや好きな作品を聞いてから、似たような映画を薦めます。映画って好き嫌いがあるから、なるべく興味を持ってもらえるようにしたいんですよ。映画をあまり観ないという子にも薦めるんですが、わたしが薦めたことで観てくれるのって、すっごくうれしいんですよね。
●尾崎由香プロフィール
1993年生まれ、東京都出身。15年より声優活動を開始し、17年にテレビアニメ「けものフレンズ」のサーバル役に抜擢され注目を集める。18年には「LET’S GO JUMP☆」でソロデビューを果たす。1stソロアルバム「MIXED」が発売中のほか、9/29(日)にSPACE ODDにて1stワンマンライブを開催する。
Twitter/@ozaki_yuka515 Instagram/ozapure15
取材・文/編集部