京アニの“粋”が結集した『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』が美しすぎる…<写真15点>

コラム

京アニの“粋”が結集した『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』が美しすぎる…<写真15点>

京都アニメーション制作の『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 - 永遠と自動手記人形 -』が、当初の予定通り9月6日より公開中だ。手掛ける作品の多くが高いクオリティを誇ることで知られる“京アニ”の中でも、特に群を抜いて緻密な作画で高評価を得ているのが、2018年1月~4月まで放送された本作のテレビシリーズ「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」だ。最新作の劇場公開というタイミングで、改めて本作が持つ魅力を探ってみたい。

【写真を見る】目に映るすべての光景が美しい。京アニの魅力が詰まった「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」
【写真を見る】目に映るすべての光景が美しい。京アニの魅力が詰まった「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」[c]暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

愛を知らない少女が「手紙の代筆」を通して“心”を学ぶ物語

主人公のヴァイオレット・エヴァーガーデンは、少女兵として戦うことだけを教えられ、人の感情を知らずに育ってきた。戦争が終わってからは、C.H郵便社を経営する後見人のクラウディア・ホッジンズのもとに身を寄せることに。

郵便社では手紙の代筆を請け負う「自動手記人形」という職業の女性が勤務している。依頼人たちの「誰かに伝えたい思い」を手紙にしたためるというサービスだ。自動手記人形として働き始めたヴァイオレットは、「代筆」を通して人の心や感情に触れ、彼女の恩人・ギルベルト・ブーゲンビリアが残した「愛している」という言葉の意味を知ろうとする。

ヴァイオレットの両手は戦火で失われ、自在に動く義手を装着している
ヴァイオレットの両手は戦火で失われ、自在に動く義手を装着している[c]暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

数々の失敗を経て少しずつ人間らしさを学んでいくヴァイオレットの姿は、観る者を作品の世界へ強く引き込んでくれる。「愛」を知るため、不器用ながらも依頼人たちに向き合い、その思いをくみ取ろうとする彼女の姿に、劇中の登場人物と同様に私たちの心も激しく揺さぶられてしまう。

C.H郵便社で自動手記人形として働くヴァイオレット
C.H郵便社で自動手記人形として働くヴァイオレット[c]暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

ヴァイオレットが出会い、影響を与えていく魅力的なキャラクターたち

伊達男で身寄りのないヴァイオレットを優しく迎えるホッジンズや、頼れる人気自動手記人形のカトレア・ボードレール、配達員の青年ベネディクト・ブルーなど、C.H郵便社には個性豊かな従業員がそろう。彼らは戦うことしか知らないヴァイオレットに影響を与え、一方で働きながら成長していく彼女に感化されることも。そして、本作で見落とせないのが各話の主役とも言える、多彩なゲストキャラクターだ。

C.H郵便社で配達員を務める青年ベネディクト・ブルー
C.H郵便社で配達員を務める青年ベネディクト・ブルー[c]暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

例えば、テレビアニメ10話に登場した幼い少女のアン。彼女は病気がちの母を気にかける一方、母親と過ごせる時間を奪ってしまう「お客さん」を嫌っている。そこへヴァイオレットが訪れる。母と2人で「内緒の手紙」を書くからと締め出されたことでアンはますます不安定になるが、その手紙が「アンの誕生日に母から毎年1通ずつ届く手紙」だったことを知る…。死という運命を受け入れながら大切な娘を思う母親の愛情に、涙せずにはいられない。

『外伝』の舞台は、良家の子女のみが通う女学校
『外伝』の舞台は、良家の子女のみが通う女学校[c]暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

人物の心と呼応する巧みな映像表現

「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」は、その背景となる風景の描き方も実に緻密。ヨーロッパを思わせる街並みや田園風景、花畑に森…。依頼を受けたヴァイオレットが各地を旅することもあり、人里離れた天文台や雪の積もる戦場など様々な場所が登場する。そして、そこに吹き抜ける風や舞い散る花びら、そよぐ草木まで、一つ一つの描写が細かく表現され観る者に臨場感を与えている。

登場人物の心情の変化を、表情や動きの変化だけでなく、繊細な風景描写と共に盛り上げる
登場人物の心情の変化を、表情や動きの変化だけでなく、繊細な風景描写と共に盛り上げる[c]暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

また、人物の心の動きに呼応する作画表現にも注目したい。7話では娘を亡くしてふさぎ込む劇作家が登場するが、冒頭での彼の家は薄暗く沈んだ雰囲気を思わせる。しかし、ヴァイオレットと徐々に心を通わせ、娘の形見であるパラソルでヴァイオレットが空をかけるシーンでは、湖に光が反射し、彼の心と同じように鮮やかな色を取り戻していく。

人物の表情だけでなく、画面全体からストーリーを味わえる。何度観ても新しい発見に出合えるのが、本作の大きな魅力と言えるだろう。

感情を知らない少女ヴァイオレット・エヴァーガーデンが「愛」の意味を知ろうとする物語
感情を知らない少女ヴァイオレット・エヴァーガーデンが「愛」の意味を知ろうとする物語[c]暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

美しい作画と、思わず涙がこぼれてしまう、人の心を動かすストーリー。最新作『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 - 永遠と自動手記人形 -』でも、ヴァイオレットが出会うキャラクターからは、様々な悩み、葛藤が垣間見える。京都アニメーションの技術が詰まった本作を、ぜひ劇場で観て感じてほしい。

『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 - 永遠と自動手記人形 -』がついに公開!
『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 - 永遠と自動手記人形 -』がついに公開![c]暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

文/藤堂真衣

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