カンヌで話題を呼んだテレンス・マリック監督最新作、FOXサーチライト配給で日本公開
今年5月に行われた第72回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品され、各国の映画評論家から絶賛を集めた巨匠テレンス・マリック監督の最新作『A Hidden Life(原題)』が、FOXサーチライト配給のもと2020年2月に日本公開されることが決定した。
本作の舞台は第二次世界大戦下、ドイツの侵攻とともにナチスの支配下に入ったオーストリア。度重なるナチスドイツの従軍司令と、その軍門に降った教会の指示に従うことなく、ひたすら己の信念と妻や娘への揺るぎない愛に生き、36歳の若さで殉教した誠実な農夫フランツ・ヤゲルシタッターの知られざる生涯が、驚異的な映像美の中で描きだされていく。
主演を務めるのは『イングロリアス・バスターズ』(09)や『マリアンヌ』(16)などハリウッド作品にも進出するドイツの名優アウグスト・ディール。そして『エゴン・シーレ 死と乙女』(16)のヴァレリー・パフナーと、『ヒトラー 〜最期の12日間〜』(04)など数多くの名作に出演し今年2月にこの世を去ったブルーノ・ガンツらが脇を固める。
マリック監督といえば『天国の日々』(78)で第32回カンヌ国際映画祭監督賞を受賞し、20年ぶりの監督作となった『シン・レッド・ライン』(98)で第49回ベルリン国際映画祭金熊賞を受賞。そして『ツリー・オブ・ライフ』(11)で第64回カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞するなど、独自の美学を貫いた傑作を生みだしつづける映画界の生ける伝説。長らく寡作家として知られていた彼だが、本作が2010年代で6作目の長編映画となった。
これまでタッグを組んできた名カメラマン、エマニュエル・ルベツキに代わり、マリック作品の要となるあまりにも美しい映像世界を作りだしたのは『ヒトラーを欺いた黄色い星』(17)で知られるイェルク・ヴィトマー。また、音楽を手掛けるのはアカデミー賞に8度ノミネートされ、これがマリック監督との初タッグとなるジェームズ・ニュートン・ハワード。
新たなスタッフ陣で生みだされた本作は、マリック監督の美学の頂点を極めた最高傑作との呼び声も高く、早くも来年のアカデミー賞の有力候補の一角として注目を集めている。そして現地時間9月9日(月)には、アカデミー賞に最も近い前哨戦として知られる第42回トロント国際映画祭での公式上映も控えており、これから本格化する賞レースで大きな存在感を示すこと間違いなし。本作から届けられる続報から目が離せなくなりそうだ。
文/久保田 和馬