宮沢りえが『人間失格』で魅せた、“妖艶で貞淑”な妻の姿<写真15点>
天才作家の太宰治が死の直前に完成させた「人間失格」の誕生秘話を、太宰自身と彼を愛した女たちの目線からスキャンダラスに映画化した『人間失格 太宰治と3人の女たち』。主人公の太宰治を小栗旬が演じ、究極のダメ男でモテ男“太宰”を取り巻く3人の女を宮沢りえ、沢尻エリカ、二階堂ふみが務めた本作。数多の女性を虜にしてしまう太宰にとってさえ確固たる“帰る場所”とあり続けた正妻の美知子には、宮沢りえの醸しだす魅力が存分に表れている。
本作では2人の愛人にはキザな言葉をするりとささやき口説いていく太宰だが、本当の自分をさらけ出せるのは正妻の美知子にだけ。飄々と女性をあしらう太宰も彼女には、布団に寝転がり言葉なくここに来てと呼び寄せ、幼い子どものように甘え切った姿を見せている。自身も出産を経験しており、昨年には再婚して新たな家庭を持った宮沢。スクリーンで見せる所作は妖艶ながらも温かで、身をすべて委ねられるような独特の魅力があふれている。
本作の構想に7年を費やしたという蜷川実花監督は、美知子というキャラクターについて「自分からはいちばん遠くて、なかなか理解しがたいところがあったんですけど、りえちゃんがやると、圧倒的に説得力を持ちました。じつは、子どもがいる話を撮るのが初めてだったんです。家族の描写が思っていた以上に厚くなったのはりえちゃんと、子どもたちの力だと思います」と語る。また、宮沢りえ演じる美知子が子どもたちとインクまみれになる印象的なシーンについても「あれは奇跡のシーンというか、子どもたちの芝居が本当に素晴らしくて、それをりえちゃんが受け止めてくれて。あのシーンはわたしが母親じゃなかったら、ああいう風にはならなかったかもしれないなと思っています。すごく気に入っているシーンですね」と、互いの“母親”としての立場が演出に活きたことを明かす。
蜷川監督の作品に出演を熱望していたという宮沢は「映画のなかの世界とはいえ太宰治の妻として生きる時間はとてもエネルギーを必要とする時間でしたが、役を生きる事に誠実な小栗さんと子ども役である素晴らしい3人の存在、才能あるスタッフが、太宰治の妻として母としての息吹を与えてくれたような気がします」と撮影を感慨深げに振り返った。
本作で太宰を取り巻いた3人の女性は個々に魅力的だが、“美しき人妻”であり、“優しき母”である宮沢の姿にはきっと誰もが魅了されてしまうだろう。
文/編集部