癒しから憂い、大人の色気まで…石田ゆり子の様々な表情に魅せられる
16年出演のドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」で大きな反響を呼び、大ヒット中の『記憶にございません!』(公開中)でのチャーミングな大統領夫人役が話題の石田ゆり子。美しさはもちろん、ほんわかとした雰囲気や知的な印象、少し抜けたかわいらしさなど、様々な魅力で人気を集めている。ヒロインを演じた『マチネの終わりに』(公開中)でも、そんな彼女の魅力が存分に堪能できる。
『マチネの終わりに』は、芥川賞作家・平野啓一郎の同名小説が原作。東京とパリの街を舞台に、ふたりの男女の6年にわたる恋模様を描いた大人のラブストーリーだ。石田が演じているのは、パリで勤務するジャーナリストの小峰洋子。婚約者がいながらも、福山雅治演じるクラシックギタリストの蒔野聡史と出会い、強く惹かれていってしまうという複雑な胸中を抱えたキャラクターだ。
ふわっと周りの空気を和ませる、おっとりとしたイメージが強い石田だが、本作ではみっちりレッスンを受けたという流暢な英語とフランス語に美しくも精悍な顔つきで、聡明さと気概を感じさせるジャーナリストという役柄を熱演している。
出会った瞬間から惹かれ合う蒔野とのやり取りでは、洋子の繊細な心情を見事に表現。彼の演奏後にその感想を伝える際には、やさしく微笑みながら柔らかな空気感を作りだし、深い仲になった時にはじっと相手の目を見つめるなど、大人の色気を感じさせる。さらに、婚約者がいる事を知りながらもストレートな言葉をかけてくる聡史に戸惑い、心が動かされそうになって、かすかに声色を震わせ動揺を表したりと、複雑な洋子の人物像を的確に捉えている。
愛する人への抑えられない思いを抱え、現実に葛藤する洋子を丁寧に体現した石田ゆり子。その美しさはもちろん、彼女の渾身の演技には見入ってしまうに違いない。
文/トライワークス